『君と まわり道』 42

 実家の玄関前には、この家が建てられた時に植えたという木が2階のベランダまで伸びていて、そのベランダの先にオレの部屋はあった。夏になると、セミの鳴く声で起こされて、毎日この木を根っこから切ってやりたいと思っていたんだ。首をあげて2階に目をやると、拓海は玄関で手招きをする。インターフォンに指を付けると力強く押した。ピンポ~ン・・と、一度鳴っただけなのにドアがすぐに開かれて、伏し目がちに中からオレを見る...

『君と まわり道』 41

 ファミリーレストランの中は、休日だという事もあって家族連れが目立つ。時間はすでに8時を過ぎていて、家族の夕食にしては遅いような気もするが........。オレの家族は休日もバラバラで、たまの夕食はホテルのディナー。一応着る服にも気を使う訳で。形だけの家族って感じで、これと言って会話も無い。それに比べると、ここに居るみんなの顔は楽しそうだし、家族の会話もそれなりにあるようで.......。まあ、思春期の子供に関し...

『君と まわり道』 40

 華やかな色とりどりのディスプレイに囲まれて人混みを抜けると、社員専用の重い扉を開く。きらびやかな表舞台から降りた気分になると、オレはロッカールームを目指した。中の私物を大きめのデイパックに詰め込むと、これから山にでも行くのかってぐらいの荷物になった。それを背負うと通用口へ向かうが、そこにいる警備員がジロリとオレを見る。まるで何かを持ち出しているかのような目。不審者っぽいのは仕方がない。でも、「お...

『君と まわり道』 39

 - - -  自転車に跨って住宅街を抜けると、通い慣れた道を走る。昨日は、一日中拓海とまったり過ごしたオレだった。病み上がりだし、おとなしく晩御飯を食べたら又寝て、日曜日の今朝はオレは仕事だが拓海は休日。普段なら遅刻ギリギリになるところを拓海に早く起こされて、朝飯まで食わされて.........。出がけに、「合鍵、お前の分持ってろよ。」と渡された。 どうしよう、凄く嬉しいんだけど.........。郵便受けに入れて...

『君と まわり道』 38

 日の光が少しだけ和らいで、床に長い影を落とす。布団にくるまったオレと拓海の身体は、ピタリとつけられたまま。オレの鼻先が拓海のうなじに当たっているが、その感触が気持ちよくて動きたくなかった。「アツシって.........」言いかけて言葉を切るから、「なんだよ?!」と聞いてみる。「ヤリチンって、ミサキが言ってたけど、意外に普通だよな。」拓海の言葉に、思わずブフッと噴き出した。「オレの事、そんな風に言ってんの...

『君と まわり道』 37

 ベッドをソファー代わりにして並ぶと、クッションを背中に当てて雑誌を読むオレとレンタルビデオを観る拓海。拓海が観ているのは、昨年話題になった映画。なぜかホラーだ。「そういうの好きだな、.........。学生の時もオレの家に来ると観ていた記憶があるけど、そのくせちっとも怖がらないんだ。」雑誌に目をやりながらも隣の拓海に言うが、返事が無い。 ふと身体を捻って覗き込むと、瞼は閉じられていた。「.........寝てんの...

『君と まわり道』 36

:昨夜は遅くの更新となりすみませんまた、遡って拍手をくださって有難うございます楽しんで頂けたら嬉しいです: 重なる唇が、洩れる吐息が熱くなりだすと、オレは拓海の腰に手を回して自分の股間の高ぶりを分からせようと擦りつける。すると、拓海の手もオレの臀部を掴んできた。互いに誇張するモノを感じつつ、それでもどこかでセーブをかけているのが分かると、少しだけ身体を離す。額をつけて、目を伏せながら息を整えると、...

『君と まわり道』 35

  遅い昼飯を取ろうと、二人でアパート近くのコンビニエンスストアへ向かった。社会人になってからは、土曜日の昼下がりに住宅街を歩く事が無かったオレは、ちょっと新鮮な気分を味わっていた。「そういえば、オレ、拓海と休みが合わなくて、こんな昼間に二人で歩く事なんて無かったな。」「アツシは平日休みだもんな。土曜日、日曜日に休むなんてあり得ない。」 拓海が言う通りで、みんなが休みの時ほどオレたちの仕事は忙しくて...