『君と まわり道』 62


 週末、ついにやって来た金曜日...............。

店では、午後からも買い物客が絶えなくて、3時頃にやっと昼飯を食べるという具合。腹ペコのオレは休憩所に向かうと社員の食堂に行き食券を買った。
トレーにうどんと稲荷寿司を乗せて長テーブルに着く。

今日はどの店も混んでいたのか、こんな時間なのに昼食をとる人が多かった。
テーブルも、いつもなら空があって独りで一つのテーブルを使うくらいなのに、今日は隣に人がいる。

「今日は人多いでしょ?!売れてますか?」
と、声を掛けられて隣を見た。

「ああ、そうっスね。結構売れてますよ。え、っと..........」
オレがどこの人だっけ、と不思議そうな顔をすると、「あ、ボクは靴屋の...........」と言った。
靴屋と言えばチアキちゃんの所か、と思ったが「そうですか、靴も売れてますか?」と、チアキちゃんの名前は出さずに聞いた。

「ええ、そこそこは。..............あの、3階の店の人ですよね?」
そう聞いてくるから「ええ。見た事ありますか?」と、こちらも聞き返す。

「3階で男の店員は珍しくて、すぐわかりますよ。」

「あ、そうなんですか、よく言われますけどね。あのフロア、ほとんど女子ばっかりだから。オレ、目立ちますかね?」

「すっごく、.........ははは、羨ましいです。けど、女子の中に怖そうな人もいるじゃないですか、いじめられてないですか?」

「ははは、その怖そうな女子ってうちの店長でしょ?!」
オレは山野辺さんの顔が頭に浮かんでしまい、そんな事を言った。言った後で、「あ、でもホントはすっごく優しいんですけどね。」と、ちゃんとフォローもしておく。
あの人は厳しいけれど優しい人だし................。

「なんか、モテそうですよね、お宅。え、っと、すみません名前聞いていいですか?」
彼は、笑いながらもオレの目を見ると聞いてくるから、「ワタベです。よろしく。」と言った。

「あ、ボクは近藤です。よろしく。」
「はい、...................。」

なんとなく自己紹介みたいな変な感じになると、食べ終わった近藤さんが「じゃあ、お先です。」といって席を立った。

軽く頭を下げて、うどんをすすりながら横目でその姿を追う。

靴屋の近藤さんは、歳は30ぐらいだろうか。確実にオレよりは年上で、身長は170ぐらい。スタイルは細身で着ている服はモノトーンでまとめていてオシャレ。黒いパイピングが入った白のオープンシャツに、ネイビーのチノパンツを合わせている。
勿論、シューズも申し分ない。おしゃれな男は好きだ。たとえ年上でも................、ただ、今のオレには生憎ひとりの男が心を占めているから、目移りはしない。
ミサキも、だけど、元々小柄な男が好みなんだよね。完全に、拓海の場合は好みを超えている。だからこそ、気持ちで繋がっているんだと思う。


* * * 
早番で、6時にあがるつもりが7時まで延ばされて、客が引かないから仕方がなかった。
クタクタになったオレは、社員の通用口へと向かって歩くが、目の前に昼間会った靴屋の近藤さんの姿を発見して、「お疲れ様です。」と声を掛けて近づいていった。

「あ、どうも、お疲れ様。」
オレの顔を見ると、軽く頭を下げて微笑んだ。

「今日は早番で、本当は6時に帰るつもりだったんスけど、混んじゃって今ですよ。」
頭を掻きながらそんな事を言ったが、「そうですか、じゃあ売り上げ良かったでしょうね。ボクの所も結構混んでましたよ。」と言った。

なんだか年上に敬語で話されると、自分の言葉使いが悪いのが申し訳ない。つい、簡単な言葉になってしまうんだ。
近藤さんは落ち着いた感じで、年上だし当たり前かもしれないが、それでいて弱い感じもするような..................。
「近藤さんって、結婚されてますか?」
「え?」
つい、立ち入った事を聞くオレに、嫌な顔はせずに「いいえ。ボクは独身主義者です、残念ながらモテませんし、だからという訳じゃ無いですけど、ね。」と微笑みながら言った。

「あ、そうなんですか........。いや、モテない事は無いと思いますけどね。」
フォローするわけじゃないが、結構整った顔立ちだから謙遜して言ってるものと思った。

通用口を抜けて表通りに出ると、オレは自転車を取りに駅の方へ向かうので「じゃあ、ここで。お疲れ様でした。」と挨拶をして別れる。そんなオレに会釈をすると、近藤さんも駅の方に足を運んだ。


自転車に跨ると、拓海が帰っているのか気になって、携帯を取り出すと掛けてみる。

暫く鳴りっぱなしのメロディーのあとで、「アツシ?どこ?」と、ぶっきらぼうな拓海の声がして、オレはちょっと恥ずかしくなった。
「今から帰るトコ。すっごく混んでて遅くなった。なんか買って帰ろうか?」

「いや、..............実は、俺、残業してるんだ。ちょっと支店の方でトラブって................、だから勝手に飯食って寝ててくれ。じゃあな。」

「え?.............え?」
と、聞き返そうとしたらプツっと切れた。

------------え?





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コメント

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Re: No title

> 焦らして焦らして焦らして、ちょっぴりフライングして(笑)

宙水さん、いらっしゃいませ( *´艸`)ウフフ
じりじりとやってまいりました。笑

> そして、やっとの金曜日に、また焦らしましたね?(笑)

> やられた、そう来るかって思いましたよ……。引き、バッチリ!(笑)

あ、そうでしょうか?!
事はそう簡単にはいかないものです。笑
でも、そろそろ「え~~~~~っ!まだか~~~~っ!!」というアツシの雄たけびが聞こえてきそうなので・・・。


No title

焦らして焦らして焦らして、ちょっぴりフライングして(笑)
そして、やっとの金曜日に、また焦らしましたね?(笑)
やられた、そう来るかって思いましたよ……。引き、バッチリ!(笑)