【妄想男子と恋のゆくえ。】36

 さっきから、グラタンを頬張る俺をじっと見つめる森の視線が気になって、こういう時は美味いとかなんとか褒めるのがいいのか分からずに、俺は黙々と熱いグラタンを口に運んだ。「そんなに慌てて食べたらヤケドするよ?!中の方、かなり熱いと思うけど・・・。」森はそう言いながら水を置いてくれる。「・・・ン、・・あ、りがと!・・・確かにあちぃや。」目の前のグラスを掴むと、一気に水を流し込んだ。溶けたチーズが上顎にく...

【妄想男子と恋のゆくえ。】35

 最後のCDをセットすると、森は立ち上がってキッチンの方へと行ってしまう。残された俺は、そのままイヤホンを独り占めして曲に合わせて頭を振った。身体に染み込んだ音が頬を高揚させると、なんだか暑くなって少しだけ窓を開けようと、ベランダの方へ行く。レースのカーテンを開け窓を少しだけ開くと、外からの涼やかな風が俺の身体を通り抜けて部屋中を駆けるようだ。そのまま床に腰を降ろすと、手にしたパソコンを置いた。陽に...

【妄想男子と恋のゆくえ。】34

 家から森のマンションまでの道のりを並んで歩く。あんなに横に並ばれるのが苦手だったのに、いつの間にかこの身長差も気にならなくなったみたいだ。時折俺に合わせる様に、ポケットに手を突っ込んで背中を丸める森が、ちょっとだけ可愛い。背の低い事を気にする俺に気を遣っているんだろうか・・・。「森ってさぁ、昔から身長デカいじゃん。それってお前のオフクロさんがデカいから?それとも親父さんが..........」と言いかけて...

【妄想男子と恋のゆくえ。】33

 「おはようございま~す」と言いながら、晴香は食堂にやってくると俺の前に座ってニヤニヤと笑みを浮べた。「おはようございます。」という森に「昨夜はちゃんと眠れました?研のいびきで起こされなかった?」と聞く。なんとも言えない不敵な笑みを浮べては、時々俺の方も見る。「俺はいびきなんかかかないし。変な事言うな!」「あ、そんなの自分で分かんないだけじゃん!たまにあたしの部屋まで聞こえてくるときあるからねー!...

【妄想男子と恋のゆくえ。】32

 暗くてよく分からないが、闇の中で俺に圧し掛かる影が森だと気づいた。いとも簡単に俺の腕は一つに捩じ上げられて、身体の上に馬乗りになった森の顔が近い。「..............な、............何してんだ?」「な~んにも。」「........この腕、.......離せよ。」「離しても逃げない?」「ああ、逃げるとか、なんで?変な事するなよな、家族が寝てるんだぞ?!」「変な事?!........例えば?」「.................」この会話がど...

【妄想男子と恋のゆくえ。】31

 「どうだったかしら、森くんのおうちならすき焼きなんて食べ飽きているかもしれないけど。」「すごくおいしかったです。うちではこういう鍋物はしないんで、嬉しいです。ご馳走様でした。」食事の後、台所に食器を運んだ森がうちのオフクロと会話している。俺はコンロを片付けながら、そんな二人の会話を聞いていた。鍋物をしないっていうのは、森が作って独りで食べる事が多いからだろう・・・。なんとなくこの間の食事を思い出...

【妄想男子と恋のゆくえ。】 30

 翌日、日曜日だというのにゴルフに出かけた親父のせいで、俺は家の掃除と片づけを手伝わされてしまう。「別に、森ひとりが来るぐらいで掃除なんかしなくても.....。」と、俺が愚痴ったら、「だって、森くんのマンション、すっごく綺麗に片付いていたって言うじゃない?!もう、うちなんてボロ家の上に要らないもんばっかりあるから・・・・、恥ずかしいわよ!」とオフクロが言う。要らないもん集めてるのはオフクロじゃん、と、...

【妄想男子と恋のゆくえ。】29

 「カラオケ行って来たけど?!」晴香が俺の横に並んでじっと見るから、俺はそう言ったけれど、なんだか不服のある顔つきで。「・・・何?」「てっきり女とデートかと思ったわ。研の顔がニヤついてるからさぁ。」「は?・・・まあ、女の子はいた。もうちょいでいい感じになったのに・・・。」俺は、森に邪魔された事を晴香に話した。でも、さっきの話は内緒。アイツの性癖とか俺に惚れてる事とか・・・。「思うんだけどさぁ、森く...

【妄想男子と恋のゆくえ。】28

 森に付いて玄関へと向かった俺は、靴を履こうと屈んだ。靴紐をキュッと結びあげると、その場で立ち上がった俺の肩に、森の手が置かれる。がっちりとした、それでいて繊細な指先は、俺の肩を包むと少しだけ力を入れて引き寄せてきた。その瞬間、またもや俺の身体は森の胸の中にすっぽりと閉じ込められて......。顔は熱くなるが、この間よりはビビッていなかった。「.......あの、これは?!」外国人がよくする(ハグ)というもの...

【妄想男子と恋のゆくえ。】27

 「それは------」言いかけた森は、口をキュッと閉じると黙って俯いた。そんな風に止められると尚更気になるじゃないか..........。「俺さ、悪いけど幼稚園の時の記憶って、お前がやたら睨みを利かしてたって事と、ずっと俺たちが手を繋いでたってことぐらいしか覚えてないんだよ。ごめんな?!」森に謝っておいたのは、自己防衛の為でもある。何かしたかもしれないけど、もう昔の事だし俺は覚えていないから、今更どうしようもな...