『曇天の月』048

 冷蔵庫を開けて覗きこむおーはらの後ろに立つと、俺はその肩に自分の顎を乗せて同じ様に覗き込んだ。少し気にするように、おーはらの顔がこちらを向く。その時、ほっぺにキスをしてやった。「うわっ!!」と、横飛びに跳ねて、俺をかわそうとするから、腕を掴んで引き寄せると言った。「リョウスケさんと近づけて嬉しいんじゃないのか?」「・・・まあ、そうだけど、さ・・・。」その様子で、俺は確信した。おーはらは、小金井さ...

『曇天の月』 047

 「あっ・・・・」耳元で声がして、うっすら目を開ける。・・・・目の前におーはらの顔があって、しばし記憶をさかのぼる俺。「どうして一緒に寝てるんだっけ?!」ダブルベッドの上にぴったり躰を寄せて俺たちは寝ていた。おーはらが、俺の腕を枕にしながら言ったが、俺は目を瞑ってもう一度記憶をさかのぼった。- そうだ、昨夜おーはらをおぶって来て、いろいろ片付けてたら疲れちゃったんだよ。親父の事もあって、精神的にも...

『曇天の月』 046

 一時間ぐらい話していただろうか、小金井さんと言う人が、まだ36歳だと分かり少しだけ驚いたが、案外話の通じる人であるのが分かった。「その若さで、沢山の店を経営されてるなんて、すごくやり手なんですね!見習いたいなぁ。」俺が言うと「とんでもない、やり手じゃないですよ。どっちかっていうと、儲からない商売ばかりに手を出してます。ほとんど人助けみたいなもんでね?!」手にしたウイスキーのグラスを傾けると言った。...

『曇天の月』 045

 時計を見ると、まだ夜の8時。おーはらは店が休みなんだろう、こんな時間にバーなんかに行くって、俺の様に物思いにふけりたいのか、それとも女の子と楽しみたいのか・・・・まあ、おーはらは無理か。地下に降りて行く階段で、なんとなく違和感を覚えるが、そのまま赤い塗りの扉の前に立つ。”アレキサンダー” 真っ赤なドアが淫靡な雰囲気を醸し出しているが、一応普通のバーらしく、開けた扉の向こうには時間が早いせいか、客が...

『曇天の月』 044

 雲に覆われた夕暮れの空を見ながら、今夜の月は拝めないのかと思い車を走らせた。子供の頃、縁側で月を眺めるのが大好きだった俺。季節は関係なく、冬は特に空気が澄んできれいに見えたから、ダウンコートを着込んででも見ていた。同じ夜を過ごす誰かも、この月を見ているのだと思うと、俺はなんとなく嬉しかった。自分の性癖に気づき、同性の友人や先輩に友情以上のモノを感じて悩んだころ、俺はこの月を同じ様に見られることで...