【曼珠沙華】 炎に落ちる 006

 眠れない夜は、たまにあの日の事を思い出す。俺を見た桂の瞳が揺れていて、高揚した頬が暗がりの中で分かるほど色づいていた。自分の唇を指でなぞっては、あの時の気持ちを思い起こした。でも、結局自分では答えが出せないでいる。俺はホモなんだろうか・・・・・・。あの雰囲気に興奮を覚えただけだったのか・・・・。周りの友達が次々と彼女を作る中、俺はひとり距離をおく。さつきと付き合っていた時とは違う。確実に、もっと...

【曼珠沙華】 炎に落ちる 005

 - - - 港南工業高校。俺が進学した高校は、大きな川を越えた先にあって、駅からバスを乗り換える時間がもったいない俺は、ほとんど友人と歩いて通った。途中の土手に、きれいな彼岸花の群生場所があって、俺はこの道を歩くのが好きだった。彼岸花は、墓場に咲く花のイメージがあって、好きではないと忌み嫌う友人もいる。葉もなく、まっすぐ伸びた茎の先には、炎をたぎらせた様に深紅の花が咲き誇る。線香花火を逆さにしたよ...

【曼珠沙華】 炎に落ちる 004

 どうしてこんなことに・・・・・?桂の指を舐めていたら、俺の中で何かが外れたみたいで。多分、今の俺は酷い顔になっている。自分以外の指を舐めるなんて、考えた事もなかったけど、おしゃぶりを与えられた赤ちゃんみたいに必死になって吸い付いていた。ふぁ、...........ぁ.............ぐっ、......意識が飛びそうなほど吸い付くと、ゴクリ、と喉を鳴らした桂は俺の顔に近づき鼻先を舐めてきた。それから指を離すと、俺の口に...

【曼珠沙華】 炎に落ちる 003

 俺が桂の指を振り払った事で、部屋の中の空気が張り詰めてしまった。「なんだよ、冗談だって!・・・」畳に座り直すと、桂は俺の顔を見て笑って言った。それでも、少し引きつった口元で、半分本気だったことが分かると、やっぱり腹が立つ。「ホモって言い方は、悪かった。別にバカにした訳じゃ無くてさ・・・・」「そういうの、テレビの中じゃバカにしたみたく言ってるじゃん。気持ちワル~って感じで。」桂が言うように、俺をバ...

【曼珠沙華】 炎に落ちる 002

 ピンクのインテリアに囲まれて、俺はひとり途方に暮れる。「さつきちゃーん。」ドアを開けて彼女の名を呼ぶが、全く反応が無い。下に降りて行ったんだろうか・・・。《どうすんだよ。帰っていいのか?!・・・・》ポツンとたたずんで、しばらく待つが物音すらしなくて・・・・。《仕方ないな・・・》俺はカバンを脇に抱えると、下へ降りて玄関へと向かった。リビングの方へ顔を向けると、「お邪魔しました~。」そう言って大きな...