【曼珠沙華】 炎に落ちる 037

 バスは、桑田さんの通う塾のある大通りに停車した。俺もここで降りて、家まで歩いて帰ろうと思ったから彼女の後に続く。夕方の人通りの多い時間帯で、ザワつく通りを並んで歩くと交差点に差し掛かり「俺はこっちなんで。」と言って手を振る。「じゃあ、有難うございました。・・・あの、秀治くんによろしく。」そう言って手を振ると、桑田さんは通りを歩いて行った。よろしくって言われても・な・・・。交差点で信号待ちをしてい...

【曼珠沙華】 炎に落ちる 036

 カフェを後にすると、二人並んで歩いて行く。知らない人が見たら俺と彼女はカップルに見えるんだろうな。男女が並んで歩く、というだけで付き合っている風にとられてしまう。男と男はどうだ・・・?俺と天野さんが、こうして歩いていたって別になんのことはない。まさか、俺たちが男同士であんな事してるなんて想像もしないだろう。世の中って、そう考えると偏ってんな。何を話すでもなく、ただ桑田さんの通っている塾が俺の住む...

【曼珠沙華】 炎に落ちる 035

 どこかでつかえていたものが、ストンと落ちた。そんな気がして、少しだけ顔をあげて歩く。もし、柴田に伝わったとしても、長谷川に知られたとしても、これでいいんだと思った。俺の周りから友人が去ったとしても、性癖隠して女の子と付き合うよりはいい。俺にはそんな器用な事は出来ないし・・・・・。少し歩いて行くと、通りに面した雑貨屋が目に入った。ショーウィンドウに並べられたレインボーカラーの時計が気になって店の中...

【曼珠沙華】 炎に落ちる 034

 狭いカラオケルームの中で、20曲ぐらいは歌っただろうか。少し疲れた俺は、ちょっとトイレ。と言って立ち上がる。「いってら~。」柴田はマイクを持ったまま、俺の背中に声を投げた。- このまま帰りたいな・・・・そろそろ話題も尽きたしな・・・・・なんて思って歩いていたら、「小金井さん。」と声がかかり振り向いた。カラオケルームで柴田と話していた筈の中島さんが、俺を追って出てきた様で・・・・・。「あ、ごめん。ち...

【曼珠沙華】 炎に落ちる 033

 柴田のように、ひと目見ただけで女の子を好きになったことが無い俺には分からなかった。ましてや、彼女が気になっている男をわざわざ同行させるなんて、いくら俺がニブくてもするわけないって・・・。「俺は行かないよ。悪いけどあの娘に興味はないし、お前の恋路を邪魔したくもないしな。まあ、名前だけ貸してもいいや。当日行けなくなった事にすれば?」我ながらいいアイデア。柴田とあの娘も自然とデートが出来るって訳だ。「...