【曼珠沙華】 炎に落ちる086

 中学生の息子を残して、外国へ行ってしまった両親は仕方がないとして、身体を悪くした祖父の事まで気に掛けないといけない桂にとって、俺とバカな話をするのが唯一の楽しみとなっている。天野さんと親しくするのが気に入らないというよりは、俺を取られるような気持になるから、それがイヤなんだろうな。「桂くん、・・・キミってゲイじゃないよね。バイって感じでもないし・・・・千早くんをこの先も思い続ける自信がある?もし...

【曼珠沙華】 炎に落ちる085

 真っ赤な革張りのソファーに腰掛けた天野さんの前に立ち、桂は腕組みをした。「で、話したい事って何ですか?」切り出したのは桂の方で。まんじりともせず、腕を組んだまま天野さんに視線を注ぐ。「........気が短いなあ。桂くんはいつもこんな感じなのか?」と、俺の方に顔を向けると聞いてくるが、急に振られて俺も焦る。「え?・・・あ、・・・うん。こいつはわりと気が短いかも・・・。」そんな事を言ってしまって、桂の顔を...

【曼珠沙華】 炎に落ちる084

 心地よいジャズの音が、目を閉じた俺の脳内をリラックスさせる。そんな美容室のBGMに混じって、女性の囁くような声が聞こえるが、気にするのも面倒で黙っていた。毛先を整えた天野さんはハサミを仕舞い、俺の髪を両手で持ち上げるとバサリと降ろした。濡れた髪が艶っぽくて、微妙に出たウェーブは普段の俺とは違う雰囲気を醸し出している。いつもは自分の顔をこんなに見ることはないのに、あの写真を見た後だと、どう違うのか気...

【曼珠沙華】 炎に落ちる083

 「いらっしゃいませ~」元気に挨拶をされて、ちょっと戸惑った。いつもは俺が、こんにちは、と挨拶をして入るのに、今日は先を越されてしまう。「あ、、、、千早くん!!」エリコさんは、店に響き渡るような大きい声で俺の名前を呼んだ。しかも、ビックリしたみたいに・・・。「こんにちは。・・・あの、天野さん・・・」と言いかけて奥の方に目が行くと、カーテンを開いて覗く天野さんの姿があった。「あ、こんちは。」「やあ、...

【曼珠沙華】 炎に落ちる082

 その日、朝のホームルームの後で、担任から職員室へ来るように言われた俺。思い当たる節はない。が、なんだかドキドキする。ひょっとして、大晦日にピアス男とモメて警官から逃げたのがバレた、とか・・・?!それってかなり前の事だよな・・・。不安をよそに、なぜか廊下を歩く俺の後を柴田がくっついて来る。「ついに小金井くん、やっちゃった?なんか問題起こしたんじゃないの?」と、やけに嬉しそうだ。「ば~か。こう見えて...