【曼珠沙華】 炎に落ちる100

 長谷川の結婚式は、俺たち友人が少し浮いていただけで、滞りなく終わった。「誰だよ、歌なんか歌おうって言いだしたの!」足元をふらつかせながら怒っているのは、吉川という同級生で。「関だよ。こいつが『やっぱり結婚式と言ったら友人たちの歌だろう』って言ったんだ。」柴田が笑いながら言う。「言い出しっぺが音痴とか・・・・・あり得ない。超恥ずかしいって!!」「ホント、俺、関とはカラオケ行った事なかったんだよな。...

【曼珠沙華】 炎に落ちる099

 今日は長谷川の結婚式で、朝から柴田が俺を迎えに来ていた。縁側に立つと、庭先を眺めては「これって大変じゃないか?そんなに広くはないけど植木とか手入れがいるもんな。」と目を剥く。柴田の見る先には、梅雨の長雨でぬかるんだ庭に植えられた無数の木があった。雑草は先日の休みに抜いたばかり。本当は枝の剪定とか必要なんだろうけど、俺にはちょっと出来なくて・・・。「今のところはオフクロに来てやってもらってる。新芽...

【曼珠沙華】 炎に落ちる098

 「お前もなんだかおっさんになったなぁ。」リビングで、テレビを観る俺にかけた父親の言葉。久しぶりに顔を合わせてコレは、ちょっとムカつく。「オヤジだって年取ったよなぁ。頭も白くなっちゃってさ。」負けずに言ってやるが、本当に白いものが多く見受けられるようになって、年もそうだが苦労もあるのかと思い、ちょっと反省。親父が気に掛けるとしたら、息子の俺の事だろう。「ま、気苦労かけて申し訳ないと思ってるけど。」...

【曼珠沙華】 炎に落ちる097

 夏の日差しを浴びたアスファルトが、ふやけるほどに熱を発する頃。夕方も6時を過ぎると、さらに人の出入りも多くなり、狭い店の中は客で溢れかえっていた。自分で言うのもなんだけど、客が入り過ぎて一人でこなすにはちょっと厳しい。アルバイトを入れようかどうしようかと考えた事もあるが、今までそれをしなかったのは、桂のせいで・・・。天野さんに対しての敵対心ほどではなくても、俺が自分以外の男と仲良くする事を良しと...

【曼珠沙華】 炎に落ちる096

 週明けの午後、白い綿シャツに紺のパンツを組み合わせ、ブルーのデイパックを背負った桂が店にやって来た。その顔は、無理に笑っているようで、上がった口角がピクピクと引きつっている。相変わらずファッションには無頓着で、シャツとパンツだけのシンプルすぎる格好は、28歳という年齢より若く見せていた。「行くの?」「うん、そろそろな・・・。」ちょっとはにかんで下を向くが、ずれた眼鏡に指を当てると、目だけを俺に向け...