【曼珠沙華】 炎に落ちる158

 マンションのドアの前にうずくまる人影を見て、俺は「ふぅぅぅ~ッ」と息を吐く。「おかえりなさい」膝を抱えたおーはらが、俺に気づくと立ち上がった。「ただいま。っていうか、何?バイトの帰りか?」ポケットからカギを取り出すと、ドアノブに差し込んでカチャリと回す。「昨夜借りた服。コインランドリーで洗ってきて........返します、有難うございました。」デイパックからゴソゴソ取り出すと、ビニール袋に入った服を俺の...

【曼珠沙華】 炎に落ちる157

 朝、カーテンの隙間から差し込む日差しで、まつげの先がキラキラ光ると、その先に見えるものは幻想の世界の様で。うっすらと目を開けて、太陽光線を避けるように、横を向きながらベッドから上体を起こした。「............おーはら?」キッチンに居るのかと、声を掛けてみたが静まり返ったままで、コトリとも音のない室内はやけに寂しい。- 学校か.....................俺は床に足を降ろすと、ゆっくり立ち上がって伸びをした。...

【曼珠沙華】 炎に落ちる156

 洗面所の棚の上に、バスタオルとTシャツとスウェットパンツを用意する。それから真新しい下着を置いておくと、スツールの上で膝を抱えて座り煙草をふかした。またもや俺は、余計な事をしてしまったんじゃないのか・・・・根本的な部分で、俺はおーはらを助けてやれる自信がない。俺自体、やっと自分の希望を見つけて前を向き始めたばかり。腰に彼岸花のタトゥーを入れたからって、寂しさから逃れられるはずがない。でも、そんな...

【曼珠沙華】 炎に落ちる155

 狭い路地裏の汚れた地面の上で、震える身体をどうする事も出来ないおーはらは、ゆっくり顔を上げると俺を見た。「こ、がねいさん...........、僕、............ッ」と、言いかけて噴き出したのは、少量の吐物。うッ、.............ぅぅ..........暫く道路に伏せる様に嘔吐すると、そのまま横にごろりと横たわった。「おい、.............お前、酒飲んだのか?」俺は近づくと、おーはらの背中をさすってやった。肩甲骨が浮き出た...

【曼珠沙華】 炎に落ちる154

 その晩、ママの店から帰る途中で、いつもは通らない脇道に足が向いていた。そこは、前におーはらが’うり’をしていた路地で、たまたま目撃した俺は思いあまっておーはらを家に連れて行った。思えば、あの日から俺たちの変わった生活が始まったが、先に見限ったのはおーはらだった。なのに、どうしてまた、ここにいるかもしれないなんて思ったんだろう。ママのマンションに身を寄せているんだ。こんな所にいるはずが......と、思っ...