【曼珠沙華】 炎に落ちる163

 - ピンポーン・・・その音で、おーはらが来たことが分かると、俺は静かにドアを開ける。「おう、いらっしゃい。入って・・・」身体を少し捻ってドアとの隙間を作ってやると、おーはらを中へ招き入れた。「こんばんは。すみません・・・」やけに小さくなって屈みながら部屋へとあがって行く。「なんだよ、久々にあったってのに・・・元気ないじゃん。」「・・・はい、すみません。」「すみませんって、謝ってばっかだな?!何か...

【曼珠沙華】 炎に落ちる162

 結局、髪を短く切るつもりが、いつも通りのヘアスタイルに落ち着くと、俺は’花カフェ’へと出向いた。ビル自体は古めかしくて、中に入っているテナントもてんでバラバラ。うちの花カフェが異彩を放つのは仕方がないとして、下には得体のしれないブリキや古い玩具を売っている店があって、そこのオーナーはかなりの年配者だという。他にもマニアックな店がひしめき合っているから本当の雑居ビルだった。いつものようにカフェの顔と...

【曼珠沙華】 炎に落ちる161

 - どんなに、どんなに、どんなに手を伸ばしたって、桂の元へ届く事はない。言葉にも言い表せない感情を誰かに分かってもらえるはずもなく・・・。朝の目覚めはスッキリしなかった。桂の家で暮らしていた時は、まだアイツの息遣いが聞こえる気がして、こんなに怯える事はなかったのに。アイツの分までしっかり生きてやるって決めたのに............何かを達成する度に、喪失感に苛まれるようになってしまった俺。「ふぅ、」とた...

【曼珠沙華】 炎に落ちる160

 こじんまりしたバーのドアを開けて、いつもの野太い声で「いらっしゃ~い」と言われると、やっぱり落ち着く。「今日はどうも、・・・やっぱりこっちのスタイルの方が、はじめママって感じするよな。」いつもの席が空いていて、そこに腰掛けると言ったが、ママはノースリーブのワンピースに身を包み、分厚い睫毛もいつも通り。「あらぁ、こっちの方が綺麗って事かしら?嬉しいわぁ。」「・・・まあ、そうっすね。キレイって事でし...

【曼珠沙華】 炎に落ちる159

  ------------夏休み前に’花カフェ’をオープンさせる。それが実現して、今日は朝からたくさんのお客さんや知人が来てくれている。それ程広くはない店内だが、真ん中に置いた『ガジュマルの木』は、存在感があって来た人は必ず「この木はなんて言うんですか?」と聞いてくる。ある地域では『精霊の宿る木』として扱われているが、自然界にあるものは20メートルにも育つらしい。店に置かれているのは大きな鉢に植えたものだった...