『君と まわり道』 45

静かな住宅街で、オレと荷物を車から降ろした拓海は、友人に車を返しに行った。オレは独り、部屋で荷物を片付けながら、以前ここに転がり込んだ時の事を思い出す。変わり映えのない部屋で、拓海の好きなダークな落ち着いた色合いのインテリア。だから心が落ち着くんだろうか。この部屋で一緒に暮らしたのは、松原あけみと再会する迄の半年程。あの頃は楽しいだけで、親友としてアイツをみていた。ゲイバーに行って、その日気に入っ...

『君と まわり道』 44

 拓海が乗せた手を振りほどくと、オレは父親の顔を見る。呆然と立っているのはオヤジの方で。ゲイの息子にかける言葉が見つからないんだろう。「何も言わなくていいよ。.....オレを気持ち悪いと思ってるんだろ?!それは言わなくても分かるから.....。」「いや、....私は、そんな事は.....。」戸惑うのは当然。オレ自身も受け入れるのに時間が掛かった。否定しながらも、どうしたって周りの連中のように女の子を性の対象としては...

『君と まわり道』 43

 母親が言ったように、オレの部屋の荷物はそのまま置いてあるようだった。勉強机の上に置かれたままのパソコン。デザイン系の本やスケッチブックまで、あの日のまま。あの日ベランダから捨てたのは、壊れないような服やカバンや身に着けるものばかり。一応壊れるようなものは避けたって事か.............。そう思うと、ちょっと滑稽だ。値段の張るものはもったいないと思ったんだろうな。オレはベッドの上に腰を降ろすと、取り敢...

『君と まわり道』 42

 実家の玄関前には、この家が建てられた時に植えたという木が2階のベランダまで伸びていて、そのベランダの先にオレの部屋はあった。夏になると、セミの鳴く声で起こされて、毎日この木を根っこから切ってやりたいと思っていたんだ。首をあげて2階に目をやると、拓海は玄関で手招きをする。インターフォンに指を付けると力強く押した。ピンポ~ン・・と、一度鳴っただけなのにドアがすぐに開かれて、伏し目がちに中からオレを見る...

『君と まわり道』 41

 ファミリーレストランの中は、休日だという事もあって家族連れが目立つ。時間はすでに8時を過ぎていて、家族の夕食にしては遅いような気もするが........。オレの家族は休日もバラバラで、たまの夕食はホテルのディナー。一応着る服にも気を使う訳で。形だけの家族って感じで、これと言って会話も無い。それに比べると、ここに居るみんなの顔は楽しそうだし、家族の会話もそれなりにあるようで.......。まあ、思春期の子供に関し...