【妄想男子と恋のゆくえ。】42

 その日、朝からテンション高めの鳥居は、待ち合わせの1時間も前に俺を呼び出した。「ったく、10時に待ち合わせって言ったのお前じゃん!1時間もこんなとこで何するんだよ?!」俺は、映画館の入ったビルの一階にあるトイレの中で、鳥居と二人、鏡に向かっていた。「だって、今日の服が気になってさぁ、変じゃね?この色ハデ過ぎるだろ。」そう言って、自分のカーキー色のジャケットの襟をつかんで広げる。中に着ているのは赤ベー...

【妄想男子と恋のゆくえ。】41

 ロングホームルームが終わると、生徒たちはやっと来る週末に期待をしつつ、月曜日とは打って変わって輝いた顔つきで帰っていく。森が一緒に帰るのか分からず、誘うのも変な気がするし、自分の鞄を持つとゆっくり教室を出た。下駄箱から靴を取り出して履き替えると、表で横山と鳥居が待ってくれていて合流する。「森は?」横山が俺に訊くが、「さあ?!」と言った。小さな子供じゃないんだ、一々一緒に帰ろう、なんて誘ったりはし...

【妄想男子と恋のゆくえ。】40

 屋上に近い階段の踊り場にいると、昼休みで賑わう声が煩いぐらいで、昼寝をしようにもここでは無理だと思った俺は鳥居を誘うと下の階の図書室に行った。図書室は、人もまばらで入口に図書委員がひとりいるだけ。テーブルについて静かに読書している奴らとは別に、俺と鳥居は一番奥の棚へと向かう。古い本に囲まれたここは、来る奴なんかいない。床に腰を降ろすと適当にその辺の古書を手に取った。鳥居は着ていたジャケットを脱ぐ...

【妄想男子と恋のゆくえ。】39

 俺の手元にあるのは、僅かな枚数の写真だけ。入園式や入学式、卒業式なんかに親が撮ってくれたものが少し。あとは、多分オフクロがアルバムにまとめているんだろうけど、さっき聞いたお遊戯会のものは此処には無かった。断片的に思い出すのは、なんとなく周りの奴らがデカく感じて怖かった様な気がした事。でも、先生には優しくしてもらって、居心地が悪いという事はなかった。森がやたらと周りのヤツを睨んでいたのは、単に目つ...

【妄想男子と恋のゆくえ。】38

 シャワーを済ませて、火照った顔を冷やしながら台所で寛いでいる俺を見ると、オフクロが突然クスクスと笑いだした。「なんだよ、気持ち悪いな~。思い出し笑いとか、いやらしいんだよ!」俺は牛乳を入れたコップを両手で包みながら、向かいに立ってこちらを見るオフクロに言ってやった。オフクロは、そう言う俺にムッとしたが、またニヤニヤと笑いだす。「マジでやめろよ~!!」牛乳を飲み干すと立ち上がりそう言ったが、「ごめ...