『曇天の月』 015



 
 ピンポーン・・ピンポーン・・・・ピポ・ピポ・ピポ・ピポ・ピポツ・・

「うるさいツ!!」

ガチャリ、とドアを開けて、司の怒った顔を確かめた俺は、すかさずドアの隙間に自分のからだを捻じ込んだ。

「あっ!おい。」

司の困惑した声を背中に受けて、勝手に上り込むと、部屋の隅に置かれたベッドの端に腰を降ろす。

「おい、なんだよ・・・・。誰が上がっていいって言った?」
司の顔は怒りを露わにしていたが、今の俺はそんな事よりもっと気になることがあるんだ。

「今日、津田弁護士と会ってきた。・・・・豊臣商事、お前の会社が俺んちの工場買い取りたいって話、知ってるんだよな?」
俺にしては冷静に言葉を発したと思う。本当は、司の胸ぐら掴んで問い詰めたい心境だったのに.....。



「ああ、そうだ。」
簡単な言葉。その前の経緯とか、なんで俺に黙ってたか、なんて説明は一切しないつもりか・・・・

「いつから?そんな話、俺は全く聞いた覚えないぜ。」
俺が、顎を上げて司を睨みながら言うと
「言った覚えもない。これはビジネスだ。オレとお前の仲でも、これは別の話だからな。」
いつも通りの冷静沈着なお言葉。


顔色一つ変えやしない・・・・・・。



「ビジネス・ね。そりゃあそうだな、セックスの最中にそんな話されたら、勃つもんも勃たないや。」
「涼介ツ!!」


- あ・怒った? 
珍しい.........顔、赤くしてやがる。

「変な事言ってないで帰れよ。オレは眠いんだ。」
司はそういうと、ベッドに腰掛ける俺のすねを蹴った。といっても軽く指の先で、だけど。

「分かった、帰るさ・・・。こんな夜更けに迷惑だったな。でも、お前ずっと電話出ないしさ。俺だって切羽詰まってたんだ。」

立ち上がると、腰に手をやり下を向いた。ホント、ちょっとばかり大人げない・・・・
チャイム連打して近所迷惑だったな・・・・

自己反省しながら、玄関へと向かう。

「おい、帰んのか?」

「え?」


- 帰れって言ったのは自分なのに・・・・・

すぐに、その目は何かを訴えているんだと分かる。でも、俺の頭は混乱していた。
この前の晩、タクシーから出てきた高級リーマンの姿が脳裏をよぎるし、おーはらとの事を見られたのも・・・・
正直、弁解の言葉を言いたかったが、うまく出てこない。
いろいろショックが大きすぎて..................。


「コーヒーぐらい出すさ。カフェインレスの、な・・・。」

ゆっくりと、棚からドリップコーヒーを出すと、ウォーターサーバーのお湯を注ぐ。
部屋中にコーヒーのいい香りが立ち込めると、少しだけ気分が落ち着いた。

テーブルの前に腰を降ろすと、俺は司に差し出されたマグカップを受け取った。
お揃いのマグカップは、大学生の時に買ったもの。

付き合いだした頃、お互いに買ったものを交換したんだ。
同じ色の同じデザインのモノを二つ買うのは気恥ずかしくて、別々に店員に渡した。
一瞬、「え?」って顔をされたけど、それぞれに買うんだから文句はない。
まあ、変だとは思っただろうな・・・・・。店を出てから、それを交換したんだ。
・・・ふふ、可愛かったな.......俺たち。


コーヒーを飲みながら、昔の事を思い出していると、斜め向かいに座った司が俺の足を自分の足の指でつついてきた。
ふと顔を見ると、マグカップを両手で覆ったままこちらを見ている。
司もあの日の事を思い出したのかな・・・・・と思った。


しばらく沈黙の後、言葉を発したのは司で
「なんで、アイツがお前のパンツ穿いてんの?」

「・・・・は?」

咄嗟に聞き返したが、”アイツ”っていうのが、おーはらだと気づいた俺は、心臓がドキドキしてきて頭が真っ白になってしまった。






【追記】
この話に出てくる津田弁護士と、王子の様な美貌の青年〔ロクイチくん〕は、別サイトで書いていた《ロクイチ》の中の人です。
あ、弁護士さんはかなり少なめです。”ロクイチ” メインなので!
リンクに貼ってあるので、気になった方は覗いてください。「ittiのBL小説&イラスト」
と言っても、今は別の話が始まっていますが。
初めて書いた小説、のようなものですから、色々 ??? となるかも・・
片目を瞑って見て頂けると有難いです。

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