『曇天の月』 027


 「若社長、髪の毛伸ばすんですか?」
と言う杏子ちゃんの一言で、俺は美容院に来ていた。
実は、帰り際におーはらから、カットモデルを探していると言うメールが入ってきて、そう言えばひと月ぐらい前にカットしたきりだったと思い出したからだ。

「この前は、修羅場になるのかと思ったけど、あの後大丈夫だった?」
おーはらが俺の髪をとかしながら聞いてくる。

「ま、なんとか・・・。」と軽くかわしたが、俺のこめかみを押さえると、鏡の中の顔を覗きこんだ。
じっと見られると、つい視線を逸らしてしまう。あの後、少し気まずかったから・・・

「言っとくけど、俺たちは長い付き合いなんだ。あんな事で喧嘩にならないよ。」
なんて、見栄を張った。

「りょうすけさんて保守派?」と聞かれ「え?」と聞き返した。

「なんでも穏便に済ませようとするでしょ?・・・それって保守的な考えだよね。」
突然おーはらが言うけど、意味が分からない。
俺はどちらかと言うと、カツとなる方で、自分の感情を抑えるのが下手だった。

「そう見えるかなぁ。結構頭に血が昇る方なんだけど。」

「うん、初めはそうかなって思ったけどさ・・・。まあ、あの人の前だからかな・・・」
- あのひとって、司の事か.......。

「おーはらくん、アイツの事知らないじゃん。あんな一瞬で司の事分かっちゃうんだ?!」
「あ、ツカサっていうんだ。綺麗な人だったね!・・・まあ、客商売してると、一瞬でその人の性格見えるときある。」

「へ、ぇ・・・そんなもん?・・・で、俺が保守的だと?!」

「うん、別に悪い意味じゃないからさ。りょうすけさんて、人が好さそうだし。」
ニッコリ笑うと、俺の目を見て言った。

俺も、別に気を悪くしたわけじゃない。ただ、おーはらの目には、司はどう映っていたのかが気になった。

俺からすると、司の方が保守的な性格だと思ってたんだけどな・・・









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