『曇天の月』 029


 話が変な方向へ行ってしまったが、なんとなくおーはらに興味を持った俺は、コイツの手伝いをすることになった。
とはいっても、”カレシ”のふりをするって事は、司にも誤解を与えてしまうから先に話をしておこうと思う。
まぁ、多分いい気持ちはしないだろうが........。

「りょうすけさん晩御飯まだでしょ?仕事終わってそのまま来た?」
おーはらが着替え乍ら言うが、目の前でどんどん服を脱いでいくから焦る。

「おいおい、いちいち着替えるのか?毎日そうなの?」と聞いてみる。

「うん、どうしてもカットした髪の毛なんかがついてるからね。それに結構汗もかくんだよ!シャンプーなんか続くと汗だく。」

「へぇ、そうか・・・」
言いながら、目の端でおーはらの身体を見てしまう俺。
やはり腰のタトゥーに目が行ってしまう。花をモチーフにしているみたいで、よく見るけど花の名前が思い出せない。

「なあ、それってシールとかじゃないだろ?本物のタトゥー入れてんの?」ついに聞いてみた。

「え?ああ、本物。でも、浅く入れてるから・・・気になる?」
腰に手を当てると、身体を捻って自分で確認しながら言った。そのカラダの線が、何とも俺の下半身に刺激を与える。
パンいちでこちらを見る目が、なんだか誘われてると思ってしまうのは、俺がいやらしいからだろうか・・・。

「先にシャワーだけ浴びて来てもいい?10分で済ますから、お酒飲んでてよ。」
そう言って冷蔵庫からビールとおつまみを取り出すと、俺の目の前に置いた。
「ああ、ありがと・・・・えっと、タバコ吸ってもいいの?ここ・・」
一応礼儀として聞いてみる。

「あ、どうぞ。灰皿はベッドのところ!」
指差すと、シャワーを浴びに行った。


灰皿を手に取ると、いやおうなしにデカイベッドに目が行って、あらぬ想像をしてしまう俺。
ここで、おーはらは...........、、、なんて想像はヤメ!!

通常の男女の出会いとは違って、俺たちゲイは出会いの場が少ない。
今はネットが盛んに使われているが、そこから本当の恋愛に至るのは難しい。
大抵は性のはけ口。ヤりたい時に声をかける・・・・・で、ヤッたら、またね~。とか言って終わりだ。
だからこそ、俺は司に執着するんだと思う。この関係を壊したくはない。

「お待たせ~。ごめんね、自分だけサッパリしちゃって。」髪を拭きながら、またまた裸で登場。

「あのさー、一応隠せ!・・・ホント・・・まいる・・・」タバコを思い切り吹かすと言ったが、特に気にする事もしないおーはらだった。

「だって、一人暮らしだもん!別に気にならないよ。」

「いや、今は俺がいるから!・・・頼むから気にしてくれ・・・」
出来るだけ股間には目をやらない様に話した。

「分かった。ごめんね!」というと、腰が隠れる丈のパーカーを羽織った。
「おい、パン・・」と、言いかけて止める。パンツは穿きたくないんだろう・・・・と思ったから。


色々ドキドキさせられながら、それでも料理は美味くて驚いた。
手早く冷蔵庫の中のもので調理するって事は、普段から慣れているんだろう。
きっと、そのパトロンにもこうやって作ってるのかな、なんて想像した。

「おーはらくん、料理美味いね!早いし。」と褒めると、
「ありがと。大したものは作れないけどね。」と、はにかんだ。
その顔が、すっごく可愛げで、俺には色々乗り越える試練が待っているな、と思った。


その後は、おーはらの専門学校時代の話や、店の話なんかをして時間が過ぎて行くが、壁掛けの時計をしきりに見ているおーはらに「もう時間遅いし、帰るかな。」と言ってみた。
「あ、あと30分待って。」
「え?」
30分と、時間を設定され不思議に思って聞く。

「11時になったら、あのひと来るから、そしたら帰っていい。」と言う。
「ぇえ??そんな・・・鉢合わせしちゃっていいのか?っていうか、俺がヤバイだろ!」ビビった俺が聞くが
「大丈夫、そんな事あるんなら、こんなお手伝い頼んだりしないよ。今までだって、平気な顔してたんだ。」
その言葉で、おーはらの切ない気持ちが尚更分かった。

きっと、ヤキモチ焼かそうとしたことはあるんだな。ことごとく失敗したんだ。
挙句、俺にカレシのふりしてくれと・・・。
ヤキモチも焼かれない。自分だけを見てくれない。そのくせ有り余るモノは与えてくれる。
・・・飼い殺し・・・・って嫌な言葉が、俺の脳裏をかすめた。



スポンサーサイト

コメント

非公開コメント