『曇天の月』 037


 実家に戻ると、親父はヤドカリ状態。
もうそろそろ、コタツは仕舞った方がいいんじゃないのか?外は、すっかり春の草花で陽気めいて、過ごしやすい日が続いている。

「親父、なんで俺に黙って豊臣の社長に電話するかなぁ・・・・津田先生に呼ばれてビックリしたぜ。」
そういうとリビングの椅子に腰かけた。

「どうせお前だって、豊臣に売り払うつもりだっただろ。」
「何言ってんだ。俺はちゃんと順序立てて考えてたんだよ。・・・・俺っていうか、俺と司、だけどな。」
ここで司の名前を出したのは、これから起こる事に、アイツは必ず絡んでくるから。
それを親父には分かってもらいたかった。

「あの、お前の親友とかいうの、司くんだっけ・・・?あれはお前、豊臣の隠し子だって話、知ってるか?」

「・・・・は???なに言ってんだ?」


- きたよ!ついにボケたか・・・・・
司が豊臣社長の隠し子だって?? どこで拭き込まれたか知らないけど、そんな冗談誰も信じない。
大学時代に司の両親の話は聞いている。
やっぱり織屋だったとか。でも、工場はもう廃業したって言ってた。

「親父、そんなふざけた話より、ちゃんと考えようよ。社員はどうなる?」
俺が呆れながら聞くが、相変わらずコタツの中でぼーっとテレビに目をやっていた。

「・・・・おやじ・・・・・」
一言だけいって、俺は奥の台所へと行く。

妹の映見は、カレーを煮込んでいた。

「映見、親父ボケてんのかな?」と聞くと、「やあねぇ、ボケるにはまだ早いわよ。あの人はああやって、頭の中では何かを考えてるんだって!」といった。

- あのひと・・・・
女は強いな。親父の事をちゃんと冷静に見てるんだ!?俺なんかすぐ頭に血が昇ってしまうってのに・・・

「お父さん、何カ月か前に親戚の叔父さんとこ行って、この家の名義変えてた。」
「は???名義って?ここは爺さんのものだろ。ってか、親父が相続したんだっけ。・・・なんで?」

「知らないわよ!だから私たちここを借りて住んでる事になってるのよ?!」
「ええっ!いつの間に・・・・・またまた俺には何の相談も無しかよ。」

腹がたってきた。
そりゃあ、俺は頼りないだろう。けど、完全無視されるのは頭にくるよな。
一応は長男だし、さ。


もう一度リビングに戻ると、
「親父、豊臣に話つけるの、あと三日待ってよ。ホント、俺たち考えてるんだからさあ。」という。

「ああ、ぼちぼち進めてるから、お前も身の振り方考えとけ。」
親父に言われて、またまたカッチーンときた。
全く、どれだけ自分本位なんだ。もっと冷静に考えろよな!!

「考えてるさ!」と、親父に吐き捨てるように言うと、俺は実家を後にする。
全く訳が分からない。何がしたいんだか、見当もつかない俺は途方に暮れた。







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