『曇天の月』 038


 次の日、朝から原料の入荷やらで忙しくしていると、あっという間のお昼のチャイムが鳴る。

「若社長、お昼に豊臣商事へ行くっていってませんでしたっけ?」と、杏子ちゃんに言われ、「ああ、ありがと。忘れるとこだった。」と頭に手をやった。
昨日、親父には3日待つように言ったが、実際向こうの社長と、どんな話になっているのか分からないから、司に聞いてみようと思ったんだ。津田弁護士に任せてもいいんだけど、親父のやることは信用ならないから・・・・・。

「杏子ちゃん!津田先生から電話があったら、俺の携帯にかけるように言って。」
「はい。」

俺は車に乗り込むと、後部座席に資料の入ったカバンを置き、豊臣商事を目指した。


うちの工場から20分ほどの場所に建つ3階建てのビルに、豊臣商事は入っていた。
本社は東京だが、この支社にも30人ほどの社員がいる。司は営業部の中堅どころ。

本来ならもっと年配の人がいるんだが、海外に支社を作ったおかげで、ベテランはそっちの方が軌道に乗るまで帰って来られないとか・・・。
だから、司の様な若手社員でも、ある程度の権限を持たされていた。

司が豊臣の社長の隠し子と言われるのも、二人で行動することが多いからだろう。
社長も司には目を掛けている。冷静に判断できるし、意外とやり手だからな。

「失礼します。真柴ですが、矢野さんは・・」
入口の社員に聞いてみる。
「え、っと。あちらの奥の方に・・・」そう言って奥の机の方を指した。
「ありがとうございます。」
会釈をして、そちらの方に歩いて行くと、何やら司の机を3人の男が取り囲んでいる。

「こんにちは。」
聞こえるように、挨拶をすると、その男たちは俺の方を見て軽く会釈した。
「あ、いらっしゃいませ。どうぞ、こちらへ。」
司が立ち上がり、俺の腕をとって、会議室のほうへ向かう。

ドアを閉めると、ふぅ~っとため息をついた。

「何?なんかモメ事か?あいつら同じ部署の人だっけ?」
俺が司に聞く。あまり見かけない顔ぶれだったから気になった。

「や、モメ事っていうか、バレたんだ。」

「え?・・・バレたって・・・・?」

「言っただろ?!受け皿の会社、作るって!・・・そのことが耳に入ったらしい。」

「ええ?・・・・・・作ったの?」
俺は驚いて、目を剥きながら言った。

- 昨日の今日で、会社作れるのかよ!!




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