『曇天の月』 039


 目を剥いて聞いた俺の胸をとんとん、と叩くと
「少し逸れたけど、取り合えず真柴の今の社員はそのまま、だと思う。あと、工場もな!」
と、安堵の表情で言った。

「どうやった?金は?」
俺が興奮して聞くから、司がもう一度俺の胸を押さえる。

「実は・・・・豊臣が100パーセント出資する。その代わり、真柴は商権と工場の土地建物、機械、在庫品すべてを豊臣に売る。その後で、倒産してもらう。」
「・・・え?倒産、て・・・・」

「お前の親父さんに、すべての債務をかぶってもらうんだ。」

「・・・・・」

- え?
どういう事だよ。親父に借金返していけって事なのか?

「悪いけど、親父さんは自己破産するしかない。でないと一生借金が無くならない。」

司が冷静に言うけど、俺の耳にはものすごく冷たく聞こえた。

「待てよ、いくら親父が悪いって言ったって、あの年寄りに借金背負わせて、おまけに自己破産って・・・身ぐるみ剥されんのか?」
いくらなんでも、俺にはそんな計画呑めない。工場を続けるために親父を切り捨てろってのか・・・・

「涼介・・・気持ちは分かるけど、このまま仕事を続けるには、これしかないんだ。」
「そんな・・・・じゃあ、親父と映見はどうなる?あそこに住めるのか?」
問いただした俺に、ううん。と首を振る。

「冗談じゃない、あそこは爺さんのそのまた爺さんの代から住んでる家なんだよ!あんなおんぼろでも愛着があるんだ。」

確かに親父と映見が二人で暮らすには広すぎるし、いろいろ手直しが必要だ。売りに出したって買い手があるかどうかも分からないけど・・・・・・・・

- あれ、・・・そういや昨日、映見が家の名義を変えたとか言ってたな・・・
俺の頭の中で、昨日の言葉が蘇った。




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