『曇天の月』 042



 濡れた髪をタオルで拭きながら部屋に戻ると、掛布団に絡みつくように足を回して、司が眠っていた。


結局、あの後は酒の勢いもあって、2ラウンド目に突入してしまった。
明日仕事だというのに・・・・・

ベッドに腰を降ろして、司の髪を触る。
相変わらずしっかり乾かさないで眠ってしまったようで、俺はドライヤーを持ってくると乾かし始めた。

音がうるさいのか、司は枕に顔を埋めてしまうが、そっと髪をすくうようにして風を当てる。

- あーあ、これじゃあ俺は司の下僕だな。

なんて思いながらも、悪い気分ではなかった。
仕事で見せる冷静な顔が、俺の前でだけ妖艶で淫靡な顔を覗かせるから・・・
誰も知らない顔を俺にだけ見せてくれるという事が、ちょっとした優越感を与えてくれる。

・・・それにしても・・・・

やはり気になるのは、昼間の話。
豊臣の社長は、司の提案を違う形で受け入れたんだろうか。
うちに100パーセント出資してくれるという事は、豊臣が親会社になる。
司との関係も微妙だな・・・と思った。

自分の髪を乾かすと、ベッドに潜り込み、司の身体をそっと抱く。
これまで以上に、仕事でも近い存在となるんだろうな。
俺は、うまくやれるかな。一定の距離を保ちつつ、プライベートと仕事を分けられるだろうか・・・・




- - - 
朝になると、バタバタで自宅に戻って行ったが、俺はそんな司の後ろ姿を見送りながら、少しだけスッキリしない感情を抱いていた。
自分でもはっきり分からなかったが、違和感の様な。

その正体が分かったのは、夕方になって津田弁護士に呼び出されたあとだった。






スポンサーサイト

コメント

非公開コメント