『曇天の月』 046


 一時間ぐらい話していただろうか、小金井さんと言う人が、まだ36歳だと分かり少しだけ驚いたが、案外話の通じる人であるのが分かった。

「その若さで、沢山の店を経営されてるなんて、すごくやり手なんですね!見習いたいなぁ。」
俺が言うと
「とんでもない、やり手じゃないですよ。どっちかっていうと、儲からない商売ばかりに手を出してます。ほとんど人助けみたいなもんでね?!」
手にしたウイスキーのグラスを傾けると言った。

俺たちが二人で話している間、おーはらはというと、眠いのかカウンターに伏せてしまい目が虚ろ。

「おい、おーはら・・・、ジュン!」
慌てて言い直すと、クスツと小金井さんが笑う。

「すみません、コイツ連れて帰りますから。」
俺は財布に手を伸ばすが、その手を押し戻して「ここは、おごらせてください。」と言われる。

「あ、すみません。」
お辞儀だけして、俺はおーはらの腕を取るが、酔っているのか、ぐにゃりとしてしまい、どうにも立てないのでおぶる事にした。

歩いてもそんなに遠い距離ではない。
「じゃあ、失礼します。ごちそうさま。」と、頭だけ下げて店から出た。
ドアが閉まるのを見届けたとき、小金井さんが軽く手を上げているのが見えた。

- 結構気さくなイイ人じゃないか・・・
あちこちにモテるのは、なんとなく分かるな。
あれじゃあ、おーはらも悩むわけだ。周りがほっとかないっていうか、リーダーの品格みたいなものがあるもんな・・・。

俺は背中で寝息を立てるおーはらに同情しつつ、マンションの入り口につく。
ここからは、鍵を出してもらわないと中に入れないからな・・・

「おーはら!着いたぞ。カギ、鍵出して。」

「・・・う~ん・・・はぁい。」
ポケットをゴソゴソすると、鍵の束をよこす。

「どれが部屋のカギだよ!店のカギも入ってんじゃねえの?」
ぶつぶつ言いながら、やっと開いたので中へと入った。

・・・・・と、俺は目の前の状態に首を傾げた。

部屋はかたずいていたが、ベッドの上は・・・・・

推測すると、昨夜あの小金井さんはここへ泊まった。
それで、休みだったおーはらは、多分一日をこのベッドの上で過ごしていたんだろう。
もちろん、あの人と一緒に、だ。

別れたいのか、別れたくないのか、どっちなんだよ・・・・
身体だけは繋げておきたいって事なのかな・・・・・?

取り合えず、ベッドの片隅におーはらの身体を置くと、シーツやカバーや、その他もろもろを引き剥がし、洗濯機に突っ込んだ。
その後で、引き出しを漁り新しいシーツとカバーを出してベッドメイキングをしてやると、おーはらを寝かす。

- 俺って、結局どこへ行っても下僕やってんな・・・・・
自分で薄ら笑いを浮かべては、落ち込んだ夜だった。






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