『曇天の月』048


 冷蔵庫を開けて覗きこむおーはらの後ろに立つと、俺はその肩に自分の顎を乗せて同じ様に覗き込んだ。

少し気にするように、おーはらの顔がこちらを向く。
その時、ほっぺにキスをしてやった。
「うわっ!!」と、横飛びに跳ねて、俺をかわそうとするから、腕を掴んで引き寄せると言った。

「リョウスケさんと近づけて嬉しいんじゃないのか?」

「・・・まあ、そうだけど、さ・・・。」

その様子で、俺は確信した。
おーはらは、小金井さんに捨てられたいと言いながら、本当は離れたくないんだ、と。
なんとなく分かるような、分からない様な・・・・・・

実に面倒臭い。

そういう駆け引きみたいなのは、苦手だ。
俺はおーはらの腕を離すと、椅子に置いた服を着て帰る用意をする。

「朝ご飯、食べないの?まだ時間あるでしょ。」

「悪いな、あんまり深入りすると、こっちがヤバイ。俺は、お前の事司に話してあるし、取り合えず了解はもらってんだけど、あんまり親しくなっても怒られそうだからな。」
そう言って、そのままドアを開けて部屋を出る。

なんとなく、おーはらがシュンとなっているのが気配で分かったが、俺にはこれ以上はどうしようもない。
昨夜の芝居でも、疲れたっていうのに・・・・

それに、仕事でもやらなきゃいけないことが多すぎて・・・・
小金井さんとの事は、しばらく様子見だな。
通りに出てタクシーを拾うと、一旦家に帰ってシャワーと着替えをした。








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