『曇天の月』 051



 その日は朝から掃除をして、足りない日用品を買うためにホームセンターへ向かった。
独りで買い物なんて久しぶりだ。

スーパーなんかには食材を買いに行ったりするが、こういうホームセンターは余程の事が無いと来なかった。
独り暮らしでは、日用品の買い置きも必要が無い。
無くなればコンビニで買ったっていいんだから。

オレは、駐車場に車を止めるとカートを押して店舗の中に入った。
大きめのカートの中に、トイレットペーパーやティッシュボックスを入れ、ついでにシャンプー、リンス、髭剃り後のローションなんかも入れていく。

- なんだか主婦みたい・・・・

と、思いつつ周りを見れば、家族連れが目に付いた。

- はぁ、日曜日のお父さんも大変だな!

小さい子供に何かをせがまれて、なだめる父親もいれば叱ってる親もいた。

俺も、小さい頃はやたら変な物をねだって、親父に叱られていた。
その度、オフクロがなだめてくれたもんだ・・・。

懐かしいな、とぼんやり見ていると、
「涼介!」と、後ろで声がかかった。

振りかえると、そこにいたのは司。
そして、隣にいるのは見覚えのある男で、確か先輩とか言ってた人だ。

「ひとりで買い物?」と聞かれ、返答に困る。

「あ、あ・・・そうだけど・・・お前は?」
隣の先輩が、司の横でカートを押していて、それを見たら言いようのないモヤモヤした感情が沸き上がってきた。

「今日、この人の家でバーベキューをするんで、買い出し。奥さん実家に行ってるから、オレが付き合ってんの。」
司は、ごく普通に話してくれるけど、俺の脳内では(奥さんが実家に行ってる)って言葉がズーンと引っかかっていた。
てことは、男二人でバーベキューして楽しく酒を飲んだりするって事だろう?


「・・・涼介?!どうした。」
ぼーっとする俺に、司が覗き込んで言った。

「あ、・・・何でもない。そうか、だったら今夜は誘わなくてよかったって事だな。先約があるんじゃ仕方がないや。」

「うん・・・だな?!また今度行くよ。電話するから。」

「ああ、じゃあな。」


後ろ髪を引かれる思いで、その場を立ち去ろうとした。が、その時「良かったら一緒に来ませんか?」と声がかかった。

振りかえれば、司の先輩が俺の顔を見ている。

「自分と司だけじゃあ、寂しいですからねえ、司の友達なら一緒に飲みましょうよ。」

先輩は、屈託のない顔で俺を司の”ともだち” と呼んでくれる。
まあ、一般的には”ともだち” なんだけどさ........。
「ありがとうございます。いいんですか?」と聞いてみたが、ニコニコしながらどうぞ、といった。

俺は司の顔をチラリと見る。

少々呆れた顔をして、オレの事を見ていた。

- 大丈夫だって、ちゃんと”ともだち” のフリをするから・・・
心の中で言ったが、あまりいい顔はしなかった。

この先輩は、司の仕事先の人でもあるし、俺も司を困らせる様な事はしたくない。
俺たちの関係を悟られない様にしなくては・・・



一旦荷物を置きにアパートへ戻ったが、その時司も俺の車に乗ってきた。
後で先輩の自宅へ案内すると言って、俺の荷物も半分持ってくれた。

「悪かったな、せっかくの休日が・・・」
司が言うから、「俺の方こそ、先輩との休日に水を差しちゃったかな・・・」と言った。

別にイヤミで言ったわけじゃない。
でも、口からついて出たんだ。案の定、司は無言になる。

- やば、俺って心の狭い男だな。
反省しながらも、アパートに着くまで会話をしないままの俺たちだった。



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