『曇天の月』 056


翌朝目を覚ますと、コーヒーのいい香りが部屋中に広がっていた。

「司?・・・」

台所にいるのかと呼んでみると、ひょっこり顔を出す。

「なに?」

今朝の司はいつもと違って見えた。
フワフワの前髪が目にかかりそうで、歳よりも若く見えるし、パッと見がリーマンというよりは大学生っぽい。

いつもはスーツにきっちりしたヘアースタイルで、いかにも洗練された営業マンだった。
なのに昨夜はみだらなオトコ。そして今朝は可愛い学生風。

俺の好きな要素をすべて満たしてくれる。

ふ・・・と、ひとりニヤケて顔を見れば「キモイ!変な目でオレを見んな!」と笑う。

「はは、ゴメン。司が可愛いなーって見てたんだよ。」
そう言ってベッドから出ると、後ろから司の腹に腕を回して抱き寄せた。

「バーカ、28の男に可愛いとか言うな!キモイから・・・」
まんざらでもない笑みを浮かべると、振り向きながら俺の頬にキスを落とす。

俺の手が司の服の中へ入ると、引き締まった腹を撫であげた。
そのまま向きを変える司は、俺の腕を掴みながら唇にチュッとすると、からだを離す。

「これ以上は無し。昨夜ので出し尽くしたからな。」
ニコリと微笑むと、熱いコーヒーを注いでくれた。

- ふ、やっぱり可愛いな・・・

俺は一人で呟くと、司の用意した朝食を食べる事にした。



お揃いのマグカップにあったかいコーヒーを入れて、一緒に朝飯を食う。
こういう毎日を司と送りたい。そう思うのは俺だけなんだろうか?!


「なあ、俺たち一緒に住まない?どっちかの部屋でもいいし、もっと広い所に越したっていいんだけど。」

昔、大学を卒業したての頃に言った言葉をまた言ってみた。

「・・・・それは、・・・無理、かな。」
司は顔色を変えずにそう言った。

やっぱりか・・・俺の期待したのと違う返事が返ってくるが、半分はそんな気もしていたから落ち込みはしなかった。

「そう、・・・」
一言だけ言って、この話はおしまい。

こうやって俺たちは、またいつもの日常に戻っていく。




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