『曇天の月』 057


 「大変です、若社長っ!」

俺が事務所に入るなり、杏子ちゃんがもう一人の事務の娘と血相を変えて歩み寄ってきた。

「な、なに?・・・なんかクレームあった?」
二人に圧倒されて聞いてみたが、ブンブンと首を振る。

「そんな事じゃなくて、・・・さっき豊臣の役員の方と弁護士さんとうちの社長がみえて・・・」
そう言ったところで、杏子ちゃんは目に涙をためて口をへの字にした。

・・・あ、泣く?

「私たち、クビです。」
もう一人の娘が杏子ちゃんの肩に手を掛けると言った。

「・・・え?!・・・クビ、って・・・誰が言った?」
突然の報告で俺自身もビックリしている。


午前中に、大阪の取引先へ納品の遅れを謝りに言った俺。
会社がゴタゴタしているからじゃないが、実際原料の供給を渋る先もあって、スムーズに事が運ばない。
そんな矢先、ついに豊臣の役員がお出ましになったわけだ。

「ちょっと、冷静になろう。うちの社長が言ったのか?」

「違いますよ!豊臣の人が、役員の方と弁護士さんが言ったんです!」

「・・・ああ、そうか・・・・」

豊臣に買われる身で、何の抵抗も出来ないが、このままの社員と機械を譲り渡したんじゃなかったのか?

「ちょっと悪い。俺がもう一度ちゃんと聞いてみるから。君たちは今日の仕事を続けてくれ。」
「・・・はい、分かりました・・・。」

鼻をぐずらせて杏子ちゃんたちが自分の席に戻っていく。

俺は携帯で親父に連絡を取ったが、応答がない。
「クソッ・・・ちゃんと携帯しとけよな!!」
小さな声で呟くと、津田弁護士に連絡をしてみる。

こちらは、出られないというメッセージが流れている。

きっと会議中か何かだな・・・・

仕方がないから、気が進まないが司に電話を入れた。
アイツがこの件に関わっていない事を願いつつ、呼び出しのメロディーを聞く。

「はい。」

「あ、俺。ごめん仕事中に。」

「いいよ、別に。」
いつも、仕事中は携帯への連絡を入れない様にしていた。
仕事の話は会社へ電話をするし、私用で連絡したい時は昼休み時間とか夕方5時をまわってから。

「今日、そっちの役員と弁護士が来た。」
俺が言うと、「ああ、知ってる。」と、少しだけ暗い声。
やっぱり知っていたのか・・・・・

「うちの事務の娘が騒いでる。・・・人事はどうなっているんだ?」

「聞いた通りだ。必要な人員はこちらでピックアップしてそっちに部署替え。だから、真柴の事務所に残るのはお前と営業の倉田さん他2名だけ。女子社員には辞めてもらう事になる。」

淡々と司の口から出る言葉を聞いて、俺はなんだか力が抜けた。



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(´・Д・)」あの~・・・8月8日から更新できずにすみません。
他で活動しておりました。 涼介&司の事忘れていなければ、また覗いてやってください。
ここからが、ちょっと色々ありますので・・・・・|v・`)ノ|Ю
よろしくお願い致します。

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