『曇天の月』 060


 二人で過ごした甘い休日はつい最近の事だったのに、どうしてこんなことに・・・・?

「ダメだな、俺。すぐにカッとなって、突っ走ってしまう。・・・司の言う通りだよ、こんな俺だから工場も守れないし、社員すら守ってやれないんだ。親父の跡は継ぎたくないって言いながら、何処かで自分の持ち物みたいな気でいた。そのくせ逃げ出すみたいな事言って・・・」

「涼介・・・ごめん、オレも言い過ぎた。イラついて口から出たけど、そんな事思ってないよ。人が良すぎるってのは事実だけど。」

胸元の手を放し、少し距離を取った俺は、司から視線を外す。ドサッと椅子に座り直すと、目頭を押さえた。
司の言葉に何の反応も出来ない程、思考回路が遮断されたみたいで.........。

そんな俺の姿をじっと見ていたのか、司が俺の肩に手を置くが、その手を握る事も出来ない。


「悪い・・・今日の所は帰ってくれ。・・・俺たち少し距離をおいた方がいい。」


「・・・りょう・・・すけ・・。」

司の声がものすごく掠れて聞こえたが、そんな事も気にすることなく俺はじっと顔を伏せたままでいた。

「分かった。・・・でも、仕事を辞めるなんて許さないから。」

「どうして?どのみち俺の、真柴の会社はつぶれたんだ。俺なんかがいなくたって変わらないさ。豊臣から人を回せばいい。」
俺が俯きながら言ったが、その時パシッと頬を打たれた。

頬に鈍い痛みを覚えつつも、目だけを司の方に向けると上目遣いに顔を見る。
司は唇をギュっと噛みしめながら俺を見ていた。

「ふざけんな、今まで何のために我慢してきたと思ってるんだ!」
眉を寄せた司は、今にも泣き出しそうな顔で俺に言った。

「なんの為?!・・・」
何を我慢してきたっていうんだ。俺には司の言葉の意味が分からなかった。

「帰る。明日また事務所に行くから、今日の所はゆっくり休め。じゃあな・・・」

そう言うとドアを開けて出て行った。
俺はひとり残されて、顔を覆うしかできないでいた。

- 辞めるのは許さないって・・・いちいち許しを請わなきゃならないのかよ。
・・・距離をおくって事には反対しないんだな。・・・離れてもいいって事か・・・?!







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