『曇天の月』 063


 爽やかな秋の風が、俺の首筋を掠めていくが、未だに気分はスッキリしないままで。
休憩室の窓から顔を出すと、煙草の煙を吐きだした。

朝の新幹線で、倉田さんと司は岐阜の原料メーカーへと出向いて行った。
俺が司と行くはずだったが、先週倉田さんと代わってほしいと言われ、内心ホッとしたような.......。

意見の相違はあったが、杏子ちゃんたちの件は解決して、俺と司が喧嘩するような状況は無くなったのに。
俺が会社を辞めると言った事も、今ではない事になっていた。司以外に話した訳じゃないし、あの時の感情に任せて口を付いて出たというのがホントの所。


「あの、真柴さんはタバコ吸われるんですね?!」
背後で声がして振り返ると、立花さんが小さな小銭入れを持って立っていた。

「あ、自販機、さっき補充していたから、まだ準備中でしょ。熱いコーヒーならそこにありますよ。」
俺はドリップコーヒーの袋を手に取ると、立花さんに渡した。

「ありがとうございます。・・・・・こんな事してくれるんですね!」と言われて首を傾げた。
「え?・・・何が?」と聞くが、クスクス笑っているだけで。

コーヒーを入れながら、窓の外に煙を出す俺に顔を向けると、立花さんは又ニコリと微笑む。

なんだか、変な感じ。
杏子ちゃんたちは、自分からジャンジャン話しかけてきたから、俺から話しかける事もしなかったが、この人は俺が何か言うのを待っているような・・・・・。

「あの、立花さんは矢野くんと同期入社なんですってね。」と、知っている事を聞いてみた。

「ええ、そうなんです。私、一年間別の仕事に就いていたんですけど、辞めて豊臣に。彼とは面接の時も同じ日だったんですよ。」

「ああ、だから仲がいいんですね。」

「え?そんな事ないですよ。ただの同僚ですから。」

はは、と愛想笑いをした俺は、タバコを消すと休憩室から出ようとした。
「じゃあ、お先に。」
「はい。」

ドアを閉めて、廊下に出ると胸を撫でおろす。
俺の近くにいる女って、妹の映見ぐらいだからな.....。
正直何を話せばいいのか分からない。大学の時も男とばっかりつるんでたから、同年代の女の子は免疫ないんだ。

少しそっけなかったかな、と思いながらも事務所に戻る。
今頃、司は倉田さんと相手先で商談中だな。帰って来るのは夕方か・・・・・。
そんなことを思いながらパソコンの画面に向かった。





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