『曇天の月』 065


 「・・・・・・・・待てよ!」

ドアに向かった司に言うと、その手を掴んで引き寄せた。

咄嗟の事で体制を崩し、俺の胸にドンとぶつかると、手を伸ばして離れようとする司。
俺は、その手を取り上げると近くの机に押し倒した。

「オイ!なに?・・・・止めろ!!」

机の上でジタバタする司の腕を頭の上に持って行くと、ゆっくり顔を近づけた。


俺の目を見ると眉を寄せて、本気で怒る司の顔は、今まで見た中で一番切なそうだった。
こんな所でキスをしようと思った訳じゃ無いが、最近接していなかったせいか、そんな顔をされると俺の理性が飛ぶ。

唇を近づければすぐに横を向かれ、拒否されたことが俺の中の何かに火をつけた。
俺は、司の両腕をひとつに掴むと、もう片方の手でシャツをたくしあげる。
すぐに引き締まった肌が現れると、俺はもう何も考えられなくなってさらに上へとずらしていった。

「涼介!!」叫んだ司の口を俺の唇で塞げば、そのままシャツの中に手を這わせ、胸をなぞった。

ん...............
声が出なくて身体をよじるが、俺に抵抗はできない。おとなしくなった司の唇を割って舌を入れる。
が、その時ガリツと音がして、思い切り司に舌を噛まれた。

「痛ぇっ!!!!」慌てて身体を離すと、自分の口を押えるが、手のひらをチラリと見れば、血が垂れていて........。

「・・・・・・痛ぇな。・・・・・噛み切るつもりか。」

「バカだな、こんな所でサカりやがって!・・・・こんなの強姦だろ。何考えてんだ。」

司はそういうと、服を直してドアを開けた。
振り向きざまにもう一度俺の顔を見ると、「バカヤロー!!」と叫んでドアを閉める。

バタンツ、

静まり返った事務所に、思い切り閉められたドアの音が響くと、俺は口を押えた手を離して椅子に腰掛けた。
目を落とすと、床に落ちたバインダーが散らばっている。
それを拾いあげると机に戻したが、冷静になると、あまりにも自分の姿が滑稽で笑えてきた。

・・・・・俺は何がしたかったんだ・・・・・?

口の中では血の味が広がり、気持ちだけが沼に落とされた様に沈んでいくと、俺と司の7年間が終わった気がして涙が出た。

- 無くすのは一瞬だな.......................。




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