『曇天の月』 067


 .........はぁ.........

朝からため息をつきながら出勤するのは情けないけど、昨夜の事があるから気が重い。

もちろん司に罪はなくて、完全に俺が悪いんだけど.....。

会社の駐車場についても、すぐ事務所に行く気になれず、しばらく車内で時間をつぶしていた。


・・コン、コンツ・・・

助手席の窓に顔を近づけてノックするのは、事務の立花さん。

- どうしようかな............

一瞬戸惑ったが、窓を開けて「おはようございます」と挨拶をする。

「おはようございます。どうしたんですか?どこか具合でも・・・?」

心配そうに俺を見るから、「いやいや、なんでもないです!」
つい大きな声で言ってしまった。



その後、なんとなく流れで、一緒に事務所まで行く羽目になる。
先にドアを開けて立花さんを入れてあげれば、後から出社してきた倉田さんにそれを見られた。

「おはようございます。」
「・・・おはようございます。」

倉田さんは、何か言いたげな顔で俺を見たが、そのまま自分の席についた。

俺は、なんとなくバツが悪くて、自分の席につくとすぐにメールのチェックをする。


目の端では司の気配を感じているが、もちろん向こうから挨拶は無しだし、俺も遠慮した。
朝から嫌な顔は見たくない。余計に惨めな気持ちになるし........。


「あの、昨日の続きいいですかね。ちょっと原料の事で気になってて・・・。」

俺の所へ来た倉田さんが、分厚い資料を持ってきて言ったが、一応司の方を見る。
昨日一緒に行ったのは司だし、俺に言われてもな、と思った。

「え、っと、矢野さんは?」

「あ、えっと、・・・糸の原料の話は、先にこちらで打ち合わせしてほしいって・・・」

「ああ、分かりました。」

俺は席を立つと、倉田さんと一緒に企画室へ行く。
本来なら、俺たち三人で原料から製品に仕上げるまでの工程を話し合うところ。

それを司は後で聞くと言う。
完全に俺を避けてるな、と思った。


「何かあったんですか?」
不思議そうに倉田さんが聞くが、俺は首を傾げただけで答えなかった。

「昨日は二人が仲良かったのが分って、今日は仲悪そうって・・・・・」
倉田さんはひとりごとのように、俺の前でボソボソ呟いている。



「・・・この原材料の値段、キロいくらって言ってました?ちょっと前の単価と違うような気がするんですけど。」

「え、そうですか・・・?」
倉田さんは、慌てて自分の資料に目を落とすと、何度も見返した。

「ふざけてるな。新規の契約のつもりで値段上げられたんですよ。前にも使ってる原料なのに・・・」
「え、・・・・あ、本当だ。」
少し目を丸くした倉田さんが、同じ原料の単価表を見比べていた。

もちろん使用量によっては値段が高くつくこともある。
でも、これは前から持っている原料で、新たに作り上げるものじゃない。
完全に足元見られてるな。

- 司がついていながら、何やってるんだよ。

倉田さんの手から資料を取り上げると、俺は昨夜の事も忘れて司のデスクに向かっていた。



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