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勇者にも賢者にもなれない俺はときどき猫になる (30)


「とにかく、いい方法を考えよう。カレの事は医者に任せるしかないけど、リキの事はマナトくんがどうにかしないと。」

 小嶋さんはマナトの肩をポンポンと打つとゆっくり椅子に腰かけた。向かいで涙を拭ったマナトは「はい」と声を出して顔をあげる。

「リキって名前、.........彼からとったんだね。」

「............はい、力哉の代りって云ったら変ですけど、カレが守ってくれたこの猫はオレがちゃんと育てないとって、そう思って。だから、手放したくないんです。」

「.............そうか、.............だけど、うちに来れないんじゃ、手放すしか...............。それともペットの飼えるマンションに引っ越しをする?」

「...............そうしたいけど、.............いま直ぐには無理だし。ほんと、自分でも我儘ばっかりだなって思います。小嶋さんに相談したって迷惑なだけなのに...........」

「ぁ、おれは大丈夫だよ。ただ、一緒に住めないのは残念だけど。........他にペットを飼ってる友人もいるし、格安でいい物件がないか聞いてみる。暫くはキミの仕事中にリキが悪戯をしないようにしておかないとだね。大きめのケージがあるから、ちょっと場所を取るけれど昼間はそこに入れておくしかない。」

「はい、閉じ込めるのは可哀想だけど、今は仕方ないです。」

 そう云ったマナトは俺の方を向くと眉根を下げた。

 俺は複雑な心境だ。だって、俺の身体は病院にあるのに、ケージに入れられないといけないだなんて。どうやったら戻れるんだろう...............。このままこうしていても、結局はマナトに迷惑が掛かるだけ。それに、自分の身体に戻れたとして、ちゃんともとに戻れるのかすらわからない。死んでいないのが分かって嬉しかったが、この先を考えると不安しかなかった。


「じゃあ、今夜は取り敢えず帰るけど、明日にでもケージを持ってくるから。組み立てに少し時間はかかるけど、いいかな?」

「はい、もちろんです。........小嶋さん、猫用のグッズとかケージまで、ホントに色々買い込んでたんですね。」

「............あはは、まあね。ここ暫くはララがおれの恋人だったから。他にお金をかける相手がいなかっただけなんだけど。でも、マナトくんの役に立つなら良かったよ。」

「ありがとうございます」

「じゃあ、また明日。」

「はい、おやすみなさい」


 小嶋さんを見送って、少しだけマナトの表情も落ち着いたように見える。
俺はベッドにあがると、丸くなって自分の事を考えた。どうやったら元の身体に戻る事が出来るのか。今更だが、ファンタジー小説のひとつでも読んでおけば良かったと後悔する。



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