『曇天の月』 073



 「リョウスケさん............。」

ベッドの上で座り込む俺に、おーはらの優しい声。
俺の背中をそっとさすると、後ろから包み込んでくれる。

「.....おーはら。」

顔だけ振り向いた俺は、頭をおーはらの肩につける。

トクン、トクン、トクン、・・・互いの鼓動はゆっくり音を刻み現実へと誘う。

「小金井さんと、・・・あれからどうなった?忙しくなって芝居どころじゃなくなったけど。きっと、あの人は気づいてただろう。」
俺がおーはらに寄り掛かったまま言うと、クスッと笑った。

「だよね、気付いてたと思うよ。でも、何にも言わない。ボクの事は追いかけもしないけど、手放しもしないんだ。・・・ずるいよね。」


ゆっくり俺から離れたおーはらは、床に置いたバッグを肩に掛けると部屋を出ようとした。
その後ろ姿は儚げで、それでいて内から放つ情念の様なものも感じられる。

「おーはら。・・・・・オマエ、それでいいのか?そんな飼い殺しみたいなままで・・・。」

背中に言葉を掛けると、振り向きながら笑顔を見せ、うんうん、と小さく頷いた。

「頭ではわかっているんだけど、ここが、ね。あの人を必要としてるのかも・・・・・」
そう言うと、自分の胸をトンと指で突く。

「・・・そうか・・・」
俺がおーはらに掛けたのは、その言葉だけ。




- - - 

シャワーを浴びて部屋に戻ると、肩に掛けたタオルで頭を擦る。

- そういや、司は髪を乾かすのが苦手で・・・・そのまま寝てしまうから、俺がドライヤーをかけてやったな。

そんな事を思い出しながらカーテンを開くと窓を開けた。

暗い夜空にポッカリ浮かぶ月が目に入ると、昔好きになったヤツの事を思い出す。
とはいっても、顔はうろ覚え。よく笑う口元とか、下がった目尻しか思い出せないんだけど。


こうやって月を眺めては、そいつもこの月をどこかで見ているのだと思って切なくなったな・・・・・。

・・・司も今夜の月をどこかで見ただろうか。
時計の針は、既に夜中の2時をまわっていた。

こんな夜中に月を見ているのは俺ぐらいのもんだな。


窓枠に肘をついてタバコを燻らせれば、白い煙が俺の前で重く漂う。

今夜は風もない。
ゆっくり目の前で広がると、やがて闇に呑まれて消えてしまった。






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