『曇天の月』 075


 次の日、せっかくの日曜日だと言うのに妹の映見が俺のアパートにやって来た。

「意外ときれいにしててビックリだわ。おにぃも、やればできる子だったのね?!」
冷蔵庫を勝手に開けて、中から缶ビールを一本取り出すと言った。

「お前、昼間っから女の子がビールとか・・・・・・」
俺は呆れる。
家では生真面目な女が、外では昼間から酒を煽るなんて・・・・・


「こんなの、お茶替わりでしょ。それに一本だけだし、ね。おにぃって案外カタブツ?」

「あのなぁ・・・・、まぁいいや。お前も彼氏が出来たらしいし、今日は俺がお祝いでもしてやろうか?」

「・・・・・その事だけど。」
ビールをテーブルに置くと、映見は少しはにかんだ顔で俺を見た。

「あのね、・・・私、結婚しようと思うんだ。その人と。」

「へ、ぇ・・・おめでとう。・・・・・っていうか、どの人か分かんないけどさ。いいヤツ?」
映見の前につまみのチップスを出しながら聞く。
一応気にはなるから。見る目は養われてると思うけど、間違っても親父みたいな能天気な男はダメだ。

「私、司さんみたいな人が好みなのよ。知ってるよねぇ。」
俺の顔を覗き込んで言うが、返答に困る。映見には俺と司の今を伝えていない。

俺の性癖知られてから、司と仲がいいのはそういう事だと感づかれ、一応は応援してくれている。
愛想をつかされて逃げられた、なんて言えやしない・・・・

「ひょっとして、司に似ている男?・・・・まさかな。」

「まさか!あんな素敵な人、そうそういないって。おにぃは果報者だよ、ホモのくせにいい男と付き合えてさ。」

「おいおい、ホモのくせにって・・・・ひでぇな・・・・。」
全く、口の悪い女だよ。全国のホモ、敵に回す気か。

「顔はまあまあ、でも性格がいい人で、結婚したらうちに入ってくれるって。どうせおにぃは帰って来ないでしょ?司さんとマンションでも買って暮らすんだろうし。」
映見が嬉しそうに言うから、俺はそのまま話を聞くだけにした。
司との事は、そのうち・・・・・・。

「俺たちの事は置いといて、お前がそれでいいんなら家で暮らせよ。親父も安心するだろうし。」
「そう?・・・安心するかなぁ・・・・。」

「今度、ちゃんと紹介してくれよな。家に連れて来いよ。」

「うん。・・・・・ありがと、おにぃ・・・・。」

俺が映見の頭をポンポンと撫でると、映見の目尻は思い切り下がっていた。
幸せそうな顔を見て、俺も安心する。

せめて、映見だけには幸せになってほしいから。





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