『曇天の月』 078



 会議室の壁にもたれるように立ち、下を向いたままの司。

こんな自信なさそうな顔は見たことが無い。いつもキッチリとして前を向き、的確な言葉を俺にくれる。
俺は司に甘えるばかりで、いつもなだめてもらっていた。

「司、そんなに肩に力入れるなよ。お前の働きは十分承知してる。今回のは俺にも落ち度があるんだ。」

司の前で、少し距離をおくと言ったが、本当はこの腕に抱きしめてやりたかった。
ここが会社でなければ、周りに人がいなければ、今すぐにでもこの腕に包み込みたい。

「・・・もういいよ。この件は、後は倉田さんと進めてくれ。豊臣の営業も来るし、せいぜい単価下げられない様にするんだな。あと、納期も。3日は余裕を持たせておかないと、どんなトラブルがあるか分からないからな。」
そう言いながら俺の方を見た。

やっと、司の顔をまともに見れた気がする。
心の中にあるわだかまりも少しは消えたのか。

「司・・・・この前は本当にごめん。ちゃんと謝っていなかったかも・・・」

「・・・いいんだ。オレもあんなに避ける事なかった。つい、気持ちに余裕がなくってさ・・・」
そういうと、壁から躰を離してドアの方へと歩き出す。

俺は、そんな司の手を取ると
「今から小山商事行くぞ!」と言った。

「え?・・・何言ってんだよ。もう話はついたじゃないか。」

焦る司の手を引くと、ドアを開けて外に押し出す。
それから肩をポンポンと叩けば、
「この仕事は、お前が始めたんだ。最後までちゃんと責任もって仕上げろよ。それで、工場の人間にもちゃんと説明してやってくれ。」

俺は、立花さんの所へ行くと、
「今から岐阜へ出張してきます。自分と矢野くんとで。小山商事に一時に伺うと連絡しておいてください。」
といい、資料をカバンに詰め込むと、司の鞄も手に持った。

「お、おい・・・。」
どんどん前を歩く俺に、司も仕方なく付いてくる。

「豊臣さんは?」と叫んだ立花さんだが、俺たちの後ろ姿を目にして
「まあ、適当に言っておきます。」と言ってくれた。




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