『曇天の月』 081


 「それにしても、涼介さんは相変わらず無鉄砲ですねぇ。思い立ったら即行動の人だ。」

ははは、と笑いながら倉田さんが言う。

会議室の中で、俺と倉田さん、司の三人で打ち合わせを終えた後に話し込んでいた。
今度の一件は、司の気持ちが分からないままだったら、行動に移せていなかったと思う。

俺の助けを必要とはしなかったんだ。
あのまま司が外されて、俺が気分よく仕事が出来ると思ったのか・・・・?

「そんなに無鉄砲なんですか?真柴くんて.....。」
司が倉田さんに聞く。

「ええ、納期が目いっぱいで、運送の車が手配できない時に、自分がトラック借りてきて運んじゃうんですから。」

「あ、それ豊臣の時にあった。自分が何とか一日待ってもらうように交渉した後、真柴くんがその日のうちに運んじゃって、相手の担当もビックリしてましたよ。」

「ですよねぇ、せっかくの好意も台無しですよ。それに運送屋もあくる日の予定が狂っちゃうし・・・。まあ、本人は一日でも早くって思うんでしょうけどね。周りは結構大変です。」

・・・・俺は黙って二人の会話を聞いているが、なんだか楽しそうだな、と思った。
人の事をけなしながら二人で盛り上がるって、どうなんだよ・・・・。

「あの、そろそろお開きにしませんか?明日もある事ですし。」
そう言って、出していた資料をひとまとめにする。

「ああ、そうですね。じゃあ、私はこれで。お疲れ様でした。」

「はい、お疲れ様です。明日よろしくお願いします。」


「お疲れ様・・・。」




事務所には、もう誰もいなくなっていて、俺と司だけが取り残されたみたいにたたずんでいた。


「俺たちも帰るか・・・」

「ああ、そうだな。」




二人で駐車場へと向かう。

互いの車の方へ向かうと、俺は司の顔を見た。

なんだか、このまま家に帰るのがもったいなくて・・・・。
せっかくわだかまりも消えて、前の俺たちに戻れるような気がしたのに。

「司、晩飯・・・・・食べに行かないか?なんか買って、お前の部屋にいってもいいけど、さ。」

俺がそういうと、司は口元をキュッと結んだ。

少し考える様な仕草で、下を向く。

- まだ何かあるのか?
司の心には、俺に分からない何かが残っているんだろうか。
期待した返事はくれそうにない。


「・・・ごめん、疲れたよな。岐阜まで往復して打ち合わせして・・・。いいよ、帰るわ。また明日な。」
俺が片手をあげて、帰る合図を送る。

「あ、・・・いいよ。・・・・ちょっと部屋、散らかってるけど。来ればいい。」

「ええ?いいのか・・・・?」

--- 驚いた。
てっきり、断られると思って。きっとまだ、心から俺の事を許してはいないんだろう。
事務所で強姦されそうになったんだからな・・・。

「本当に?」
そう言うと、「ああ、俺の車で行く?お前のはここに置いて行けよ。」

「う、ん・・・・。」

口元がニヤケるのを我慢しながら、俺は司の車に乗った。


久しぶりの司の車で、助手席に乗せてもらい、俺の口元はやっぱりニヤける。





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