【曼珠沙華】 炎に落ちる 002


 ピンクのインテリアに囲まれて、俺はひとり途方に暮れる。

「さつきちゃーん。」
ドアを開けて彼女の名を呼ぶが、全く反応が無い。
下に降りて行ったんだろうか・・・。

《どうすんだよ。帰っていいのか?!・・・・》

ポツンとたたずんで、しばらく待つが物音すらしなくて・・・・。

《仕方ないな・・・》
俺はカバンを脇に抱えると、下へ降りて玄関へと向かった。

リビングの方へ顔を向けると、
「お邪魔しました~。」

そう言って大きな声で挨拶をして、靴を履くと外へ出た。

もう一度玄関を振り返ってみるが、やはりさつきは出て来ない。



この状況を自分で整理しきれなくて、俺のどこが間違っていたんだろうと思った。

嫌だという事を女の子にするわけにはいかないし、かといってどうすればさつきが喜ぶのかも分からない。

こんな時は、桂(かつら)に電話。


脇に抱えたカバンを漁ると、この前親に買ってもらった携帯電話を探す。
今はまだ、ほかに持っている友達は少ない。

そんな中、桂は塾に通っているから親が持たせてくれたらしくて。

俺はというと、アネキが買ってもらったついでに、ちゃっかり便乗してゲットした。
カバンの奥から取り出すと、早速、桂にかける。

「・・・・あ、俺。分かる?」
ちょっと緊張してしゃべる俺に
「名前、表示されてっから。前も言った。・・・千早、早いじゃん。9時に待ち合わせだったろ?」
冷静な桂の声がして、少しだけ緊張が解けた。

俺は、さっきの事を桂に話しながら歩いた。
もちろん、人には聞かれたくないから、小さな声で話す。

「千早、良かったら今からでも家へ来いよ。オレのトコ誰もいないしさ。」
そう言われ、「うん、行く。」と答えた。

桂秀治(かつら しゅうじ)とは、小学校が別だったけど、両親が仕事で外国へ行き、今は祖父母と暮らしていた。

俺の家の近所で、中学に入ってからは結構仲がいいし、物知りで、なんでも聞くと答えてくれるから、ついつい頼りにしてしまう。

俺は小走りで帰ると、桂の家の庭先へと回った。

縁側で本を読んでいた桂が、こちらを見ると手で合図をするが、上がり込んだ俺の顔を見てニヤッと笑った。

「・・・残念だったな。童貞卒業するチャンスだったのに・・・・。」

「は?・・・・・あ~・・・・まあな。」

畳の上の座布団に寝転んで、桂の顔を見ながら答えたが、本当は残念という気持ちはなくて........。
ただ、さつきに悪い事をしてしまったという気持ちの方が強かった。

「なぁ、桂って童貞切った?相手いたっけ?」
何気なく聞いてみたが、俺は結構ドキドキしていた。

桂の事は何でも知っている。と思っているが、女の子の話は聞いた事が無い。
実際、俺たちはそう言った事には疎くて、俺はもっぱらファッションに興味があって、早く大人になりたいと思っていたし、自分で稼げるようになったら好きな服を買える。将来はブティックをやりたいと思っていた。

桂は、・・・・・・・・・

桂は頭もいいし、やっぱり先生とかかな。
ぼんやりと思いうかべながら桂の持ってきたカステラを手に取った。

口を開けてかぶりつく俺と目が合うと、返事はせずにメガネの奥で不敵な笑みを浮かべるだけ。

「・・・何?!」
気持ち悪くて聞いてみたが、口元をあげてニヤリとするだけで。

「なんだよツ!!秘密かよっ!!」
俺はちょっと腹がたって、桂の足首を掴むと床に転がした。

ドスンツ   鈍い音が響いて俺の横に倒れ込むと、
「痛ぇ~・・・・」
と言いながら、睨んでくる。



「・・・・・・・・・」
俺は、その目を見たら、どういう訳か言葉に詰まった。



「・・・・・・・・・」
桂も、俺の目を見たままじっと動かない。


「キスしたんだ?!」
突然桂に聞かれて、目を丸くした俺は首だけでうん、と答えた。

「ふうん・・・・・・」

桂は、俺の口に指を伸ばすと、人差し指でそっとつついてきた。

「・・・・?」
固まる俺に、「キスしたのに勃たなかったんだ?!」

指でつつきながら言われて、ちょっとドキッとした。


「ヤバイね、千早。・・・・・ホモじゃね?!」


桂の言葉に、目を丸くした俺。

驚きと同時に胸の高鳴りを感じたが、桂の指を振り払うと、「違ぇよ!!」と言って起き上がった。




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