【曼珠沙華】 炎に落ちる 014



 「良かったら、今から店の子の誕生会やるんだけど、来ないか?」

「え?俺が、ですか?!」

天野さんに誘われて驚くが、あまりにも突然で返事に困る。



「・・・えっと、試験が近いんで、ちょっと・・・・。」
一応勉強もしておかないと、と思って断ろうとした。

「そうか・・・・、まあ仕方ないか。なら、連絡先教えて。携帯もってる?」
そう聞かれ、「はい。」と答えた。

俺に何の連絡をしようっていうんだろう・・・・。
ちょっと不思議に思ったが、携帯を取り出すと番号を教えた。

「ありがと。今度頼み事するかもしれないから、よろしくね。」
「あ、はい・・・。」

そんなやり取りをして、俺は美容室を後にした。

天野さんは入口で見送ってくれて、にこやかに微笑んでいた。


本当に今日は変な一日で、イラついたりドキッとしたり呆気に取られたり・・・・・・・。

そう言えば、あの彼岸花の毒の話を確かめるのを忘れていた。
あれがきっかけだったのに・・・・・。


大通りをひとり歩きながら、そんな事を考えている時だった。
目の前のビルから出てきた人影を見て足が止まる。


- 桂・・・・・


上を見上げると、そこは塾が入っているビルで、桂はこの塾に通っているんだろうか、と思った。
と、その時、桂の後ろから小柄な女の子が付いて行くのが見えて。

・・・・・・あぁ、・・・・・彼女、かなぁ・・・・・・。

〔藤ヶ谷女学院の一年生〕

そんな事を聞いた覚えがある。
長谷川が言っていたんだ。

見ると、桂は何も持っていないから、きっと彼女を迎えに来たのかと思った。

俺は、なんとなく二人の事を目で追ってしまう。
声を掛けるのも躊躇するほど、二人が仲良く話しながら歩いている姿を見て、俺の中の何かがジクジクし出した。

なんだろう・・・・。
そう言えば、中学の時には桂が誰かと付き合ってるとか聞いた事がない。

俺はつくづくそういう事に興味が無かったんだな、と思った。
桂は頭も良くて優しいから、女子には受けが良かったけど、誰か特別な子がいたわけじゃなかった。
気づくと、俺や他の男子といたからなぁ・・・・・・・。

後ろから見ていると、小柄でセミロングの娘が、桂の手を取った。
すると、一瞬隣の彼女に目をやった桂が、ちゃんと手を繋ぎ返す。

- あ、・・・・・・・・・

思わず口を開けて、言葉が出そうになる俺は、慌てて口を塞ぐ。

何故だか、桂が〔男〕なのを再認識して、胸が熱くなった。

俺だって、さつきと手を繋いで帰っていたじゃないか・・・・。
あの頃は、それが当たり前の事の様に感じて、深く気にした事はなかった。

でも、こうして仲の良かった男友達が、彼女と手を繋いでいるのを見るのは変な感じで。
それがあの桂だから、俺は余計にソワソワしてしまうんだ。

一体どこまで手を繋いで行くのかと、後ろをついて歩く俺は気になったが、自宅へ帰るのに横断歩道を渡らなきゃならなくて。
少し先を歩く二人を目で追いながら、交差点に差し掛かる。

信号が赤で、立ち止まった二人に近づく格好になると、俺の中に焦る気持ちが沸き起こる。

- どうしよ・・・・声かけないと余計に変かな・・・・・。

そう思っていたら、彼女が桂の手を離してバイバイ、という仕草で手を振った。

桂も手を振り返す。



ちょっと身構えたのに、肩透かしを食らった俺は、桂の背後から「よッ!」と声をかけた。

振り返って俺を見た桂が、目を丸くして驚く。
「なんだ・・・・千早・・・か。」

「なに、彼女とデート?」
俺はさっきの彼女の事を聞いた。別に聞くつもりはなかったのに、口をついて出てしまったんだ。

「・・・や、デートじゃないよ。塾が終わるの待って、ここまで歩いてただけだから。」

「・・・・お前、それだってデートっていうんじゃん。わざわざ終わるの待ってて帰り道に喋ってんだろ?!」
桂の答えがおかしくて、俺が確認してやった。

「え、こういうのもデートになるの?」
目を丸くして聞いてくる。

「お前さあ・・・・・・」と言いかけたが、止めた。
信号が青になって、二人で渡ると同じ方向へと歩いて行く。

しばらく歩いて細い道に入ると、
「こういうのもデートっていうのかなぁ・・・・。」
ポツリと桂が言った。


「え?・・・・・・・」

俺は桂の顔を見る。

桂も俺の方に顔を向けると、ニッコリと笑った。


- ヤ、・・・・・それって可笑しいだろ?
俺たちは、ただ同じ方角に住んでるから一緒に歩いてるだけだし・・・・・




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