境界線の果てには。(015)

唇から伝わる冷気で、火照った顔が一気に冷め、広斗の意識も覚醒した。

「あ・・・」
目の前に差し出されたものを見て、その先の人物にも目をやる。

そこには、アイスのパ○コを半分に割り、にこやかに微笑みながら広斗を覗き込む真咲の顔があった。

「なにやってんの?」
不機嫌そうに言う広斗。

「熱がある時は、冷たいアイスが気持ちいいだろ?・・・それに、その瞼もついでに冷やしとけ。」
そういうと、もう一つのパ○コを瞼に押し付けてくる。

「ぅわっっ!!つべ、ってぇ・・」
あんまり冷たいので布団で顔を隠したが、広斗はちょっと嬉しくなってしまった。

心配して様子を見に来たんだ・・・? 関係ないだろって言ったのに・・・あの娘を放っておいて?

それに、瞼が腫れていることも気にしてくれたのか・・・と思った。

「今何時?先生は?」
真咲に問うと、「昼だよ。先生は昼飯食ってくるってさ。だからオレが代わりに見てるんだろ?」
ベッドの横の椅子に座りながら、パ○コの封を開け、広斗の口に持ってくる。

それを口に含み、サクサクと音を立てながらかみ砕くと、口の中が一気に冷たくなるが、甘い香りと味に満たされて、顔もほころんできた。

「さっきの・・・」
言いかけて、口をつぐんだ真咲の目がじっと広斗の口元を見た。

「・・・なに?お前も食べたいの?」広斗が真咲の目の前にアイスをかざす。

真咲は広斗の腕ごと自分の方に持ってくると、食べかけのアイスを袋ごと噛みしめた。指で、後ろの方を押してやらないと出てこないのに、大きな口でそれを咥えてズズツと吸い上げるから、広斗は変な気分になる。

「なんか・・・エロイ・・・その吸い方・・・。」言った自分の顔が熱くなるのを感じる広斗に、真咲は流し目をするように微笑んだ。

―コイツ、絶対わざとだな・・・

広斗が、もういいだろ、とアイスを自分の口に戻す。
ようやく二つとも食べ終わった頃、昼食を終えた校医が戻ってきたので、広斗は真咲と一緒に医務室を出た。

別段話すことも無く、ただ肩を並べて廊下を歩く二人。

昨夜のことが嘘のようにいつもの日常に戻っていたが、それは視線の先の彼女を目にした途端、現実へと引き戻される。

「それじゃあ、ありがとな。」
広斗は、片手だけを上げて真咲にそういうと、女の子の横をすり抜けるように教室の方へと戻って行った。




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