【曼珠沙華】 炎に落ちる 016



 学校へ向かいながら、大きなあくびを繰り返す俺に、柴田が笑いながら「寝不足か?」と聞いてくる。

「うん・・・・なんか最近よく眠れてないんだ。」
頭をガシガシ搔きながら言うが、本当の事だった。

「試験が近いからじゃねえの?小金井、試験勉強してるらしいじゃん。聞いたよ、同中だった頭のいいやつに教えてもらったんだろ?長谷川も一緒に行ったって言ってた。」

「まぁ、そうなんだけどな・・・・。やっぱり慣れないことをするもんじゃないな。頭痛いよ。」

「ははは・・・肝心の試験日に熱出すなよ?!」
「はは・・・ホントな!」

いつもの道を歩いて行くが、寝不足のせいか本当に頭が痛くなった。
目に入る彼岸花の赤い色は、余計に頭痛を酷くさせる様で、今日は花を愛でる気にもなれない。


学校へ着くと、しばらく授業を受けていたが、頭がガンガンしてきて辛くなったので、保健室に行って頭痛薬をもらおうと階下へ降りて行く。

賑やかな男子校の中で、唯一静かな場所。
保健室に用のあるような生徒は滅多にいなくて、時々怪我をした奴が絆創膏をもらいに行くぐらいだった。

「失礼しま~す。」
そう声を掛けながらドアを開ける。

保健室の先生はいなくて、仕方がないからまた教室まで戻ると、近くに座る奴に頭痛薬を持っていないか聞いてみた。
生憎誰一人持っている奴はいなくて・・・・・。

そのまま我慢をしていたけど、帰るころには寒気もしてきて、本当に病気なんだと自覚する。

「大丈夫かよ。家まで送ってやろうか?」

長谷川が心配して言ってくれたけど、さすがにいい年して送られるのは恥ずかしい。
「大丈夫だって、一人で帰れるし。ありがとな、じゃあな。」

「気を付けろよ?!ちゃんと休んどけよ!」
「ああ、バイバイ。」


長谷川とは駅で別れて、そのまま自宅の方へと歩き出した。

プツ、プツ、、、、、

雑踏の中でクラクションを鳴らされ、振りむいたそこには、駐車場から出てきたらしい車の窓から顔を出す天野さんの姿が。

「今帰りか?」

「・・・・はい、、、、」

3メーターぐらい離れたところから大きな声で聞かれ、俺がだるそうに言うと、天野さんが手招きをして近くへ来いと合図をした。
仕方なく、俺は車の傍まで寄って行くと、少し屈んで窓から出した天野さんの顔を見る。

「なんだ、元気ないなぁ。昨日はあんなに元気そうだったのに・・・」

「なんか・・・風邪ひいたみたいで、頭痛くて。」
天野さんの顔を見ながら、俺はニッと笑って見せた。

この人にまで心配させるのは申し訳なくて......。

「熱あるのか?」
と、俺の首の後ろを掴むと、自分に引き寄せながら聞いてくる。
「え?」と驚きの声を上げるが、天野さんは、俺のおでこを自分の額に当てて熱を測っていた。

そんなの子供にすることなのに。と思ったけど、抵抗も出来なくてそのままにしていた。

「ちょっとあるみたいだな。乗ってけ。」
「え?・・・・車にですか?」
「そう、家は分かってるんだから送ってやるよ。」

そう言うが、歩いても15分くらいの所なのに、と思って躊躇していると、「早く早く。」と急かされてしまい乗る羽目になった。

「歩いて帰れるのに、すいません。」と謝るが、微笑む天野さんの顔を見たらホッとした。
助手席に座り、シートにからだを預けると、一気に安堵感が増して目を瞑る。

学校から今まで、痛いのを我慢していたのもあるし、電車が込んでいて疲れたのもあって、1分とたたないうちに俺は意識を飛ばして寝落ちしてしまった。







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