【曼珠沙華】 炎に落ちる 017



 静かな音楽と共に、頬に当たる柔らかい感触が、俺に心地良い眠りを与えてくれる。
思わず頬ずりをして、もう一度くるまる様にからだに纏うと、向きを変えてみた。

その時、生暖かい体温が俺の膝小僧に伝わる。
うっすら目を開けて、自分の意識をさかのぼってみるが、空白の時間があるようで。



「ここ、・・・・・え?なに???」


俺が目を覚ますと、そこは大きなキングサイズのベッドの中。
頬に当たる柔らかいものは、シルクのシーツのようで、今は全身がスベスベの感触に包まれているのが分かる。

更に、さっき膝に当たった生暖かいもの。
その正体が、俺の目の前で眠っていた。

その人を見て、俺は自分でもびっくりするくらいの叫び声をあげた。
「ぉわっっっ////////!!」


「あ、・・・目が覚めた?」
その人は、俺の叫び声で顔をあげて聞いた。

「あ、天野さん!!・・・・これは?」


「今日は、花屋の休業日かなんか?誰も出て来ないんだよ。シャッター閉まってるしさぁ。」
天野さんは、ベッドの中で大きく伸びをすると言うが、俺は即座に母親が朝言っていた言葉を思い出す。

「そうだ、今日は日帰りのバスツアーに行ってくるって・・・・。聞いていたんだった・・・・。」
やっと頭がすっきりして、そのままうな垂れた。

「あッ!!」

突然大きな声を出す俺に、天野さんもビクっと肩をあげたが、自分の姿を目の当たりにして声を上げずにはいられなかった。

俺は、どういう訳か裸になっている。


「こ、これ・・・・は?なんで俺ハダカなんですか?」

「いや~、花屋は閉まってるし、チハヤくんは寒い寒いっていうし、しょうがないからオレの家に連れてきて介抱してたんだよ。」

「か、いほう、って・・・・ハダカで?」

「寒い時は裸で温め合うといいんだって。服着たままじゃ、汗をかいてまた冷えちゃうからね。」

「・・・・・・・・・・」

俺は絶句した。車から此処まで歩いて来たんだろうに、全く記憶にはなかったから.........。



「おいで、また熱が上がっちゃうよ。」

「いえ、いいです・・・・大丈夫ですから。」
慌ててベッドから飛び出ると、その辺に自分の服が置かれていないか探す。

「慌てなくても、病人に手は出さないって!」
天野さんはクスッと笑いながら、ベッドの先のサイドボードを指差した。
見ると、そこには俺の制服と下着が畳んで置かれていて......。

取り敢えず焦って着替えると、俺は頭を掻く。
それから、少しだけ天野さんの会話をさかのぼる。

- 病人には手を出さない・・・って?!
そもそも、俺は女の子じゃないのに。なに言ってんだ?

「あの、すみません。ホントに有難うございました。俺すぐに帰りますから。」
ジャケットに袖を通しながら言ったが、天野さんはベッドの中で頭を起こすと、つまらなさそうな顔をした。

「残念だなぁ、お母さんたち何時に帰って来るのさ。晩飯食べて帰んなよ。」
そう言われ、「いえいえ、」と手を振った。
これ以上迷惑をかける訳にはいかないし、裸で男と寝てただなんて想像したら、胃が痛くなった。

平気なのか?!

天野さんは、こんな事が平気で出来る人なのか?!

驚きの方が強くて、頭の痛いのをすっかり忘れるほど、俺は混乱していた。






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