【曼珠沙華】 炎に落ちる 020



 あくる朝、約束通り天野さんは俺を学校まで送るつもりでいたが、肝心の提出物を家に置いたままなのに気づき、家に寄ってもらう事にした。

「結局家に帰らないといけないんじゃないか。・・・・ちゃんと初めから泊まるつもりなら入れておくのに・・・・・。って言っても、泊るつもりはなかったけど・・・・。」
助手席でひとり文句を言う俺に「悪かったよ。急に思いついてさ。」と、天野さんは頭を下げた。

「いや・・・・、まぁ、良かれと思って連れて行ってくれたんだし、いいんですけどね。」

「半分は、いたずら心もあったんだけどね。本当に熱出ちゃったし、悪戯はできなかったなぁ。」
ちょっと残念そうに言うから、天野さんの顔を見てしまう。

「・・・・・天野さん、昨日から変な事ばっかり言って・・・・。」
笑うに笑えない。冗談だと思っていても、俺を女の子に見立ててイタズラするつもりとか、マジで気持ち悪いだろ。

車の中で会話しながらも、本当は少し緊張している。
天野さんのいう事が、いちいち俺を誘っているみたいに聞こえて、内心はビビっていた。

「チハヤくんの高校にはいないかな、同性と付き合ってる奴。」

「え?!・・・・男同士で?」
「そう、だって男子校だろ?探せば絶対いるはず。」

俺の心臓はドクンと音をたてて、天野さんに聞こえないか心配になるほどだった。
「ホモって事?そういうの、なんて言うんですか?」

思わずそんな話に食いついてしまって、興味深々っていうのがまるわかり・・・・
自分に、落ち着け、と言い聞かせてネクタイを掴んだ。


「呼び方は色々あるだろうけど、同性しか好きになれないならゲイ。まあ、ホモともいうのか・・・。女も好きだけど男ともセックスできる奴はバイ。・・・・ちなみに、オレはバイの部類かな。どっちも好きだから。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

言葉が出なかった。
天野さんの性癖を聞かされて、昨夜の自分が危なかったことを知る。

冗談で言ってると思っていたのに・・・・・。

「あ、そろそろ着くぞ。玄関の前で止めるから取って来いよ。」

「は、はい・・・。」

次の角を曲がると桂の家がある。
そう思ったらなんとなく目が行って、一瞬身体が硬直した。

自転車に乗った桂が、交差点に差し掛かって、俺たちの車が行き過ぎるのを待っていた。
ゆっくり通り過ぎる車の中の俺と目が合うと、そのまま互いに顔を見合わせたまま視線が絡まる。

桂の、微かに開いた口元が、、「あ、」と言葉を発した気がする。
何故なら、俺もまた心の中で発していたから・・・。


玄関先に車を付けてもらい、自分の部屋へ荷物を取りに行くと、カバンに詰め込んで階段を駆け下りた。
店にいた母親が何か言っていたが、「行ってくる。」とだけ告げて、急いで外に出る。

車に乗り込んで呼吸を整えると、桂の姿が見えないかバックミラーを確認したが、さすがに姿は無くて・・・。

そのまま天野さんに送ってもらうと、校門で降りてお礼を言った。

「じゃあな、あんまり無理すんな。」

「は、い。」

俺は、ちょっとぎこちない返事をした。

天野さんの車を見送った後も、俺の心臓はドキドキしたまま。

桂に、今朝の俺たちを見られたのもあるけど、こんな身近に相談できそうな人がいただなんて。

自分がホモかもしれないなんて言えないけど、そういう話を聞くぐらいなら、と思った。
でも、相談するにはちょっと難ありっていうか・・・・・。

昨日のアレは、俺が病気じゃなきゃ確実に誘っていた感じだ。
後ろから躰を抱きしめられて眠るなんて、初めてで変な感じだったけど、あんなふうに優しくされたら、その場のノリで抱き合ったりしちゃいそうだもんな。

女の子とも、そんな経験が無い俺にはよく分からないんだけど、きっとあんな感じで寝たりするんだろうな。

・・・・・うわぁ・・・・・、なんか・・・・・・ムズムズする。



下駄箱で靴を仕舞いながらも、言葉に言い表せない感情が、俺の中でグルグルと回りだした。

- ちくしょう・・・・クソツ。

一人で意味もなく興奮する俺は、また熱が上がりそうになって、急いで教室へとかけて行った。








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