【曼珠沙華】 炎に落ちる 024



 カバンに教科書を詰め込むと、「じゃあ、ありがと。」と言って立ち上がった。

俺の顔を見上げた桂は、眉をしかめる。

「千早・・・何か悩んでる事ある?オレに・・」と言いかけたが、言葉を切る。

今までの友達関係が、この言葉で台無しになるのは桂も避けたいんだ。
俺だってそう、悩みを打ち明けて引かれたら立ち直れない。
そんな事なら、一生桂には知られない様にするし、この間の女の子と付き合うことで何とかなるんならそうしたい。

「悩みなんてないけど、英語の単位がギリでヤバイだけ。留年とか恥ずかしいしな。・・・そんだけだよ。」

「そうか・・・、まあ、単語だけでも覚えたら何とかなるって。ガンバレ。」

「うん、ありがとな。おやすみ。」


ドアを開けると、廊下に出て玄関へと向かった。
桂が後から付いて来て、靴を履く俺をじっと見る。

「バイバイ、・・・。」「うん、バイバイ。」

互いに、口元だけに笑みを浮かべて別れた。



暗い夜道を歩く俺。外灯の光に照らされて、自分の影を踏みながら進むが、気分はパッとしないまま。
来るときは、あんなにワクワクしていたのにな・・・・・。


自分の部屋に戻ると、ベッドにダイブした。
ふわふわの布団に身体を沈め、桂の言葉を思い出す。

- キスしちゃったって、・・・ちゃんと覚えてるんだな。
ホモじゃないかって言ったことも・・・・。

はあ........

訳もなく悲しくなった。また、あの言葉を桂に言わせてしまった。
俺の中で消化できない事が、俺自身を苦しめる。
もっと、はっきりそうだと分かれば、前に進めるのかな・・・・。


気づくと布団にくるまりながら朝を迎え、カーテンの隙間からこぼれる光が目に入って起こされた。

- - - 
「どうだった?ちゃんと教えてもらったの?桂くんは昔から優等生だったもんね。」
母親がみそ汁を入れながら言った。

「おい、早くしてよ。時間無いんだからさあ・・・。」
朝の忙しい時に、ゆっくりしゃべってる時間なんかないってのに。

「何よ!自分が早く起きないから悪いんでしょ?!桂くんの話、お母さんに聞かせてくれたっていいじゃない。せっかくまた行き来するようになったのに・・・。ケチ!」

母親が言いたいことは分かる。昔は頻繁に行き来していて、長谷川が前に言ったようにべったりだったから。

「桂は昔と変わってないよ。教え方もうまいし、俺に単語帳くれるしさ。・・あ、彼女が出来たらしい。でも、これは言いふらすなよ。」
そう母親に釘をさすと、ご飯をかき込んで食べた。

「おっ、彼女か!・・・先越されたねぇ。まあ、すべてにおいて、あんたは桂くんに追い付けないんだけどさ。はは・・」

我が子を落ち込ませる母親って・・・・・。


結局、朝から機嫌の悪い俺は、学校へ着いてからもイラついてばかりいた。

試験前で、部活も休み。とは言っても、ほぼ帰宅部と化している美術部なんだけど。
誰もいない空間で、気持ちを休めるにはいい場所だったから、なんとなく部屋の中に入って行った俺だけど、すぐに後悔することになる。

引き戸を開けたその先で見たもの・・・・・。

一人の生徒の上に覆いかぶさるように、もう一人が抱きかかえていた。
二人の衣服が乱れていることが分かると、俺の心臓は口から飛び出しそうになった。

ここは男子校。
俺の中で、こういうことは男女のする事だと思っていた。
もちろん、俺はさつきとは未遂だったけど、うまくできたらこんな風に抱き合っていたと思う。

- あ・・・・・。

一瞬で色々な想像が頭の中を駆け巡ると、俺は来た道を引き返した。

慌ててカバンを胸に抱えると、下駄箱で靴を履き替える。それから外に出ると、一目散に川沿いの道を走った。

その間も、俺の鼓動はうるさいほど鳴っていた。



- いた!・・・・前に天野さんが言ってた通りだ。
- マジでいた!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

俺は、パニック状態だった。今までこの高校に入って、初めての光景を目の当たりにして、おまけに自分の悩みとリンクするような・・・・。

正直、昨日覚えた単語がすべて消えるほどショックだった。







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