境界線の果てには。(016)

若く弾んだ声がこだまする廊下を抜け、3限目の教室へと入ると、高木が見知った顔の生徒としゃべっていた。

広斗に気づいて近づいて行くが、まとった空気がどんよりしているので、話しかけるのを躊躇する。
「まだ具合悪そうだな?帰った方がいいんじゃないのか?」

「大丈夫、薬もらったし寝てたら良くなったよ。」

そういう広斗の表情がさえないので、高木は心配になる。

―青木って、綺麗な顔のわりに口が悪くて、投げやりなところがあるんだよな。
ちょくちょくエレベーターの中で倒れていたから、周りの奴らにはちょっと遠巻きにされてたけど、基本明るい性格だと俺は思ってる。
中野と深い付き合いになってるのは知っているけど、それで幸せならいいと思ってたんだ。
・・・けど、どうしたんだ?青木といい中野といい、・・・


「あ、そうそう青木、昼飯食べてないだろ。これやる。」
そう言って差し出したのは購買で買った焼きそばパン。もしかして、と思ってカバンに忍ばせておいた。

「高木・・・おまえってホントいいやつだなぁー。」
パンを両手で受け取ると、広斗がしみじみと言った。

「なんだよ、気持ち悪いなぁ・・・別にお前が食わなくても、俺のおやつにするだけだし、さ。」

早速パンの袋を開けるとかぶりつく広斗。その顔を見て、少し安心する高木だった。



授業中は、神経を集中させて講義を聞いた。3年の間に取れる単位は取っておく。
4年になったら本格的に就職先を絞る。面接受けて、卒業までに自分の向かう方向を決めたいと思う広斗だった。

あの事故から、自分の中の何かが変わってしまった。
普通の男子高校生だった俺。沢山の女の子が寄ってきて、一人に絞るなんてもったいなくて次々と遊んだ。
そのツケが回ってきたのか・・・・

授業に集中しながらも、時折昔の事が脳裏をよぎる。その度、首をぶるっと振っては自分を戒めた。


なんとかその日の授業を終えると、そそくさとバッグをかけて帰ろうとする。

「今日はちゃんと休めよ?」
「おう、そうする。アリガトな。」

高木に片手で合図して、廊下に出た広斗だが、一瞬たじろいでしまう。

視線の先に真咲がいて、広斗に気づくと横に居た女の子に「じゃあ、バイバイ。」と言って近寄ってくる。

広斗は、今日だけでも何度気持ちが上がったり下がったりを繰り返したことか。いい加減辟易していた。

「家まで送る。」

そう話しかけてきた真咲に、「離れるって言っただろ?!聞いてなかったのか?」

静かに、けれど強い口調で言うと、真咲の横をすり抜けた。

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