【曼珠沙華】 炎に落ちる 034


 狭いカラオケルームの中で、20曲ぐらいは歌っただろうか。
少し疲れた俺は、ちょっとトイレ。と言って立ち上がる。

「いってら~。」
柴田はマイクを持ったまま、俺の背中に声を投げた。

- このまま帰りたいな・・・・
そろそろ話題も尽きたしな・・・・・

なんて思って歩いていたら、「小金井さん。」と声がかかり振り向いた。

カラオケルームで柴田と話していた筈の中島さんが、俺を追って出てきた様で・・・・・。

「あ、ごめん。ちょっと先に済ませてくるから・・・・」
「うん、ごめんなさい・・・。」

トイレに駆け込むと、胸を押さえた。
柴田の気持ちを知っている俺は、この後どうしようかと本気で心配になる。
俺なんかに告るより、柴田と仲良くしてくれたらいいのに・・・。




さっさと済ませて手を洗うと、俺は考えた。

用事があると言って抜けよう。
後は柴田が何とかするだろう。
もう一人の、桑田さんて娘も気をきかせてくれたらいいんだけどな。


ドアを開けて少し歩くと、通路の所で中島さんが俺を待っていた。

「どうも。」と言って横に並んで歩くけど、何を言われるかドキドキしてしまう。

「小金井さんは付き合ってる人いないって聞いたんですけど・・・。ホントですか?」

「・・・・ああ、柴田が言った?!・・・うん、今のところは。」
本当のことを言うしかなくて、中島さんが少し嬉しそうな表情になって焦る。
期待されても困るんだけど。

「それなら、私とお付き合いしてもらえませんか?あの、トモダチからでいいんで・・・。」

俺は、一瞬下を向いて考える。
- トモダチって言ったって、結局は付き合ってほしいって事だよな・・・。

「・・・今は、誰かと付き合いたいって思っていなくて、やりたい事とかあるし、多分俺と付き合ってもつまらないよ。」
精一杯のお断りの言葉を選んだつもり。

でも、ちゃんと伝わっていなかったのか、中島さんは「トモダチでいいんです。」と言った。

「・・・・。」

そう言われると、ホントに困る。

中学の頃なら良かったけど、今の俺はもう自分の事が分かり始めてきたんだ。
柴田や長谷川とは違う。
俺は女の子に全く反応しない。
そういう気持ちにもなれないんだ・・・・・。

「中島さん、・・・・俺は女の子が苦手。・・・分かるかな?!」
「え?・・・」

「そういう事だからさ。・・・・柴田には内緒にしといて。」

「・・・・・そ、・・・・・・・はい、・・・。」




一人で部屋に戻った俺は、「ごめん、ちょっと電話入っちゃった。先帰るから・・・ここ置いとくな。」と言って財布から3千円を出すとテーブルに置いた。

「え?・・・あれ、杏ちゃんは?」
柴田が焦る。

「トイレじゃないか?合わなかったけどさ。・・・じゃあな!」

そのままドアを開けて部屋から出ると、カラオケボックスを後にする。


中島さんに言ってしまった・・・・・。


柴田には内緒って言ったけど、話してしまったかも・・・。
でも、それならそれで、俺も腹をくくれる。

もう後戻りはしない。自分の性癖を背負って生きてやる・・・・・。






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