【曼珠沙華】 炎に落ちる 035



 どこかでつかえていたものが、ストンと落ちた。
そんな気がして、少しだけ顔をあげて歩く。

もし、柴田に伝わったとしても、長谷川に知られたとしても、これでいいんだと思った。
俺の周りから友人が去ったとしても、性癖隠して女の子と付き合うよりはいい。

俺にはそんな器用な事は出来ないし・・・・・。


少し歩いて行くと、通りに面した雑貨屋が目に入った。
ショーウィンドウに並べられたレインボーカラーの時計が気になって店の中へと足を運ぶと、手に取って見てみる。

- 38000円、・・・・・さんまんはっせんえん??!

うそ・・・と思ったけど、ケタはあっている。

「それ、可愛いですよね。高いけど・・・。」

俺の後ろで声がかかる。

一瞬店の人かと思ったが、声の主はさっきカラオケボックスで別れたばかりの桑田さんだった。

「あれ、・・・・二人は?置いて来たんだ?!」
俺が聞くと、首をコクリと下げた。


「小金井さん、友達に気を使ったんですね。柴田さん、杏ちゃんの事好きみたいだし・・・。」
桑田さんにも分かったって事は、かなりアイツの熱量が高いって事だな。
まあ、デレデレした顔を見たらだれでも分かるか・・・。

「桑田さんも、気を使って二人にしたって訳か。」
俺の思惑通りなんだけどな。

「でも、杏ちゃんは小金井さんが好き。柴田さんには悪いけど、女の子は相手に脈が無くても諦められないものです。」

「へ、え・・・・。そんなもの?!」

手に取った時計を棚に戻すと、桑田さんの方に向きやった。

「そんなものですよ。恋する乙女は無敵になるんですから。・・・なんて、その反動で、ラブラブの後の失恋は地の底まで落ちてしまいますけどね。」

少しだけ物憂げな顔をして見せるから気になった。

小柄で可愛い感じの話し方が特徴的。
あと、セミロングの髪の毛がサラサラで綺麗な桑田さんは、失恋でもしたんだろうか・・・。

「暇になっちゃったし、お茶でもする?・・・外野同士で。」
「はい。」

俺と桑田さんは、雑貨屋の奥にあるカフェに入るとテーブルについた。

こんな風に、全くの感情抜きなら女の子とも普通に話ができる。
俺はカフェラテを注文した。

「私はハーブティーにしようっと・・・。」
そう言って、何種類かあるうちの一つを指で刺すと注文していた。


「私たちがデートしているみたいですね。」
「・・・・、そお?!」

ニッと笑った顔は確かにカワイイ。中島さんとはまた違った可愛さ。

特に何をしゃべる訳でもないけど、二人で注文した飲み物を口に運んでは辺りを見回す。

「こういう雑貨屋さんが好きなんですか?・・・さっきの時計、スイスのブランドもので日本限定モデルなんですよね。私も狙ってて。」

「あ、そうなんだ・・・。ブランドは知らなかったけど、レインボーカラーが目を引いて可愛いよね。文字盤もカラフルだし・・・。」

俺は感覚だけの人間。
あんまり物についての詳しいことは知らないし、ブランドとか誰のデザインだから、とかはどうでもよかった。
自分の中に沸き起こる何かが、そのモノを欲するっていうか・・・・。
上手く言えないけど。



「杏ちゃんが小金井さんを好きになったのって、もう半年も前の話なんですよ。」
不意に言われて、エツと驚く。
- 半年も前?


「三田駅の少し先のお花屋さんが実家ですよね?!」
「え・・・・そう、だけど・・・。」
ちょっとビビった。全く接点のない女子高生が俺の実家まで知っている。

「家、近所だっけ?同じ中学だったかなぁ・・・・」

「いいえ、実は私の元カレがその近所に住んでいて、遊びに行ったときに教えてもらって・・・。」

「なんで?!」

「丁度、彼のおばあちゃんがお誕生日で、お花をあげたいって言ったら教えてくれたんです。それで杏ちゃんを付き合わせて買いに行った時、小金井さんがお店に居たって訳です。」

「・・・へぇ・・・、そうなんだ。」
「一目ぼれしたって浮かれて大変だった。杏ちゃん、それから私のデートにくっついてくるんだもん、困っちゃった。」


「どうしてくっついてきたの?・・・デートの邪魔だよね・・・。」

「それが、元カレが小金井さんと同級生だって分って、絶対紹介してもらうって・・・ホント迷惑。」

「・・・同級生?・・・・って誰だろ。」

「桂 秀治・・・中学の時は仲が良かったって聞いたんですけど。知ってます?」




しばらく声が出なかった。

あ、・・・・それじゃ、この娘は前に桂と一緒に歩いていた娘か?!

「知ってます?」
もう一度聞かれて「うん、」と返事をする。

「元カレって言ったよね・・・?!別れちゃったって事?」

「そう、なんだか変で・・・・。」

桑田さんが顔を曇らせた。


「変?!・・・・アイツ、変な奴じゃないだろ。真面目っていうか、勉強できるし何でも知ってるし・・・。優しい男だったけど。」
俺が桂の肩を持つのもおかしな話だけど、「変」と言われたらちょっと・・・・・。

「塾の帰りに待ち合わせして、途中まで送ってくれたりして優しいんですけど・・・。なんていうか・・・手を出してこないっていうか。」

「はあ??・・・・いや、キスしたって・・・・」
「え?・・・・ヤダ・・・。してないしっ!!・・・っていうか、誰に聞いたんですか?秀治くんが言ったんですか?」

桑田さんが頬を赤くして言ったから、俺まで恥ずかしくなる。
そんな会話をしたって事がバレて、桂に悪いと思った。

「言っておきますけど、私、秀治くんとは手を繋いだだけですから。二人きりになっても避けられて、すぐに勉強の話をされちゃう。」

「へぇ、・・・・。まあ、桂らしいって言ったら悪いけど、・・・・でも、てっきりもっと深い付き合いしているんだと思ってたよ。」

「まさか!! まあ、杏ちゃん同様、私も秀治くんに一目ぼれした口ですからね。でも、彼は断り切れずに付き合ってくれちゃいましたけど。」

「そっか・・・・アイツらしいかな・・・。」

つくづく呆れる。
俺にいいところを見せようとして、キスしたとか、その先もしたとか言っちゃってさ。何を張り合ってんだか・・・・。


「あ、そろそろ私帰ります。塾の時間があるから・・・。」

「え、今日は土曜日だよ。塾あるの?」
驚いて聞くと、
「そうですよ。勉強できない子は嫌いなんですって。まぁ、もうどうでもいいんですけど、私、頭のいい男の子が好きなんで、今度は塾で見つけようかと。」

「ああ、・・・・・そう、・・・・・。」

女の子って、強いな・・・・。

さっき、失恋は地の底まで落ちるとかナントカ・・・・・。あれは誰の話だったんだろうか・・・・・。





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