【曼珠沙華】 炎に落ちる 036


 カフェを後にすると、二人並んで歩いて行く。

知らない人が見たら俺と彼女はカップルに見えるんだろうな。男女が並んで歩く、というだけで付き合っている風にとられてしまう。
男と男はどうだ・・・?

俺と天野さんが、こうして歩いていたって別になんのことはない。
まさか、俺たちが男同士であんな事してるなんて想像もしないだろう。
世の中って、そう考えると偏ってんな。

何を話すでもなく、ただ桑田さんの通っている塾が俺の住む三田駅の近くなので、一緒にバスに乗って帰る事にした。

さつきと別れて、俺の隣から女子の気配は消えたけど、こうやってバスに隣同士で座るのも悪くはない。
・・・ただそこに、恋愛感情は生まれないってだけで。


「杏ちゃんには絶対言えないな~。私が小金井さんと一緒にバスに乗っただなんて。」

隣で笑う桑田さんは、こちらをチラリと見ると言ったが、俺は返事をしないまま口元だけをニッと上げておいた。
女同士のそういう事はよく分からなくて。

そんな事より、俺は桑田さんが桂とどこで知り合ったのかが気になった。

けど、もう別れてしまった人との事は振り返りたくないかと思って聞かずにいた。
それなのに、バスに揺られて肩が当たるほどの距離に座り、何か話をしないと間が持たないと思ったのか、桑田さんの方から桂の話をし始める。


「秀治くんて勉強教えるのうまくって、最初に知り合ったのは図書館だったんですよぉ。」

「へ、ぇ・・・・・・。そうなんだ。」
顔は前を向いたまま返事だけをした。

「色々教えてもらううちに、素敵な人だな~って・・・。優しいし、頭もいいし。顔も好みだったし・・・。」

「へぇ・・・・。」
俺は、このままこんな話を聞かされるんだろうか・・・・。

少しトーンダウンした俺の返事が悪かったのか、桑田さんは「そういえば、」と前置きをしてから、少しこもった声で話を続けた。

「彼のご両親、離婚したじゃないですか?!・・・もう1年ぐらい前だって言ってましたけど、そのあたりから結婚て意味あるのかな。なんて思い始めたって言ってました。ショックだったんでしょうね。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「そういう事があって、あんまり女の子と近づけないのかもしれないな。・・・なんて、別れてから思っちゃいました。」

親の離婚の話は、うちの母親に聞いたけど、本人からは何も聞かされていなかったし、俺には分からなかった。
桂が、いつもまっすぐ前だけを見ている男なのはわかっていたけど、親の離婚がアイツにどんな変化を与えたのかは分からない。

「秀治くんの初恋の人って聞いた事あります?どんな娘だったか。」

「いや、・・・恥ずかしいけど、俺たちつるんでたわりにそういう話はしてこなかったんだ。」

「そうなんですか。・・・聞いても教えてくれなかったんで、小金井さんなら知っているのかなって・・・。」

「でも、そんなの知ってどうするのさ。幼稚園の先生だったとか言われても興味ないだろ?!」
俺が桑田さんに言えば、彼女はこちらに顔を向ける。

「たとえそうでも、秀治くんの理想とする女性像が分ればいいんですよ。おとなしい人とか、しっかり者とか、分かればそういう人になれるように努力しますよ。」
「でもさあ、・・・・」

言っている事がバカみたいだと思って、俺も桑田さんの顔を見た。

「好きな人のためには、女の子は何でもしますよ。ショートヘアがいいっていえば切るし。・・・あ、秀治くんの好みはセミロングらしいです。私のはちょっと長いって言われて・・・、肩ぐらいがいいとか。小金井さんの長さくらいですかね?!」

「は?!・・・・・」

俺には彼女の気持ちが全く分からない。
男の望むように変える必要があるのか?
ありのままの自分を一人の人として好きになってもらえたらいいんじゃないのか?
・・・・・・・・・・・・・とにかく、俺は女じゃなくて良かった。
みんながみんなじゃないだろうけど、こういう思考回路は大変だと思った。

- 桂、お前よく付き合えたな・・・。

心の中で俺はアイツの性格に感心する。






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