【曼珠沙華】 炎に落ちる 046




 -------俺が何だっていうんだ。


俺と桂の距離は、離れることが無く、互いに相手の言葉を待っているようで、静まり返った病室の空気だけが重苦しい。


「もし、・・・・誘われたとしても、俺はやっぱり断っていたと思う。」
言葉を発したのは俺の方。

こんな重い空気にしたかったんじゃない。
もっと打ち解けて、昔のようになりたかっただけなのに・・・・。


「中島さんって娘、今、俺の友達と仲良くてさ。だから、もう俺には見向きもしないと思うよ。」

「・・・ホントに?」
桂が少し驚いた口調になる。

「うん、・・・お前の元カノ?!・・・しっかりした娘だよな。さすが桂が付き合う娘だって思った。」

「・・・・・はは、・・・素直なんだか押しが強いんだか、分かんないんだ。でも、悪い事したかも・・・。」

「まあ、済んだことはどうしようもないけどな。」
俺はそう言ったが、まさか塾で次の男を探しているとは言えなかった。

「貴理にくっついて来る度に、千早を紹介しろって言われて・・・・貴理と別れたら言われなくなると思ったんだ・・・。」
うな垂れて話す桂の様子で、俺はもう一度ベッドの近くに歩み寄った。

そんな事の為に、桑田さんと別れたなんて・・・

桂もどうかしていると思ったが、さっきの俺の言い方は、桂を嘘つき呼ばわりしたみたいで、ちょっと反省する。
俺にカッコつけたかっただけなのにな・・・。


「じゃあ、帰るな。また来るから......。」

今度こそ、ちゃんと顔を見て言ったが、「うん。」と頷く桂は、俺の顔を見てはくれない。


そっと身体の向きを変えて、ドアの方を見た時だった。
「千早・・・」
俺の名を呼ぶ桂の声が震える。


顔だけ声の方に向けると、起き上がった桂がベッドから飛び出して俺にしがみ付いて来た。


「・・・・?!な、なに?」
背中にドンッと体重をかけられて、俺の身体は前のめりになるが堪えた。



「イヤなんだよ、オレは千早が誰かとイチャついてるのなんか見たくないんだっ!!」


背中で聞く桂の声は、やはり震えている。
それと同時に、胸の鼓動の激しさまで俺の背中に伝わってきた。


この病室だけ時が止まったみたいで、俺と桂の周りだけが別世界の様だった。


「か、つら・・・・・?!どうした?」
振り返らずに声だけかけるが、俺のジャケットを掴む手は尚も強くなっていって、下に目を落とせば裸足のままの桂の足があった。

「冷えちゃうだろ。お腹に悪いからさ・・・もう、ベッドに戻れって!」

「・・・・・分かってないな・・・・。やっぱり童貞には分かるわけないか・・・。」

また、’童貞’と言われてカチンとくる。
自分だってウソ言ったくせに、と。

「なんだっていいけど、俺には桂の言いたいことが分かんないよ。早く布団に戻れよ、風邪ひいて死ぬぞ。」
そう言って無理やり引き剥すと、肩を掴んでベッドに押し戻す。

バサツ・・・

ベッドに乗ると、頭から布団を被る桂に、半ば呆れる俺。

- あ~・・・もう、何やってんだよ、俺たち!!!



「じゃあ、今度こそ本当に帰るからな!バイバイ。」


桂の返事はもらえなかったけど、俺はそのまま病室を出ると長い廊下を歩いて行った。






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