境界線の果てには。(019)

玄関で靴を脱ぐと普通に上がりかけたので、広斗がムッとして
「誰が上がってもいいって言ったよ?不法侵入だぞ」
と真咲に向かって言う。

「昨日さぁ、肉買っただろ?あれ、オレの金も入ってんだからな。その分は食ってく。」

そういうと、冷蔵庫を開け肉のパックを取り出した。

「ちょ、っと・・・・なに?・・・なんなの?お前。」

慌てる広斗が、阻止しようと肉のパックに手を伸ばすが、真咲はひょいとかわして触らせない。

「おいっ!!ふざけんなよ?!お前、俺の話聞いてた?別れるっていったのに・・・」

「聞くわけないだろ?!却下だ、却下。」

フライパンを取り出すと、勝手にコンロに火をつけて肉をざっと入れた。

「おわっっ、、、、ちょ、、、勝手に焼くなよぉ~~~」

だんだん情けない声になる広斗をよそに、真咲は塩コショウで味付けすると、スライスした乾燥ニンニクとケチャップ、それにソースも入れた。

「広斗、昨日の残りのもやし取って。」

広斗が、いわれるまま冷蔵庫からもやしを取り出すと、真咲に渡す。

ケチャップの甘い香りとニンニク、ソースの香ばしい香りが部屋中に広がる。

「はい、出来上がり。」
満足げの表情で広斗を見ると、テーブルに皿を出し盛り付けた。

あまりの手際の良さに呆然とするが、気を取り直すと真咲を睨みつける。
勝手に、肉もやし炒めを作りバクバク食べている。しかも別れ話のさ中に、だ。

どういう神経をしてるんだ・・・と呆れる広斗。

広斗の前に皿を置くと、真咲が言う。
「広斗は何がそんなに不満なの?何を焦ってる?オレが挿入させないのがイヤなの?」


-急に真面目な顔で言うなよ。
 そんな事じゃなくて............

一旦は、切り離せたかに思えた真咲との1年半が、こうしているとまた蘇ってくる。


密室でなければ隣に女の子がいたって大丈夫なのに、絶対俺と女の子の間に入ってきて、距離を取らせていた。

それに、高木に俺たちの関係を知られた時にも、普通に驚きもしなかったよな。

「多分、真咲には俺の気持ちは理解できないと思うよ。俺自身が、自分を持て余してるんだから。俺、女にはなりたくねえし。」

「・・・・・は?・・・誰が女って?」
ほとんどを食べ終わってから、真咲が聞く。

「だって、俺なんか女の代わりだろ?」広斗の投げやりな言葉に、

「気持ち悪い事言うなよ。広斗がいくら可愛い顔でも、お前にスカート履かせたいなんて思わないから。」

「だって、女扱いするじゃん、お前。・・・俺だって絶対スカートなんか履かねえし!!」

「オレはさ、初めはお前の事、色々背負っちゃって可哀そうだな。とか思ったんだけど、今はホントに側にいて守ってやりたいって思ってんの。男の、青木広斗でいいんだよ。チンコついてても、な?!」


......................あーーー、これだから真咲は...............。


広斗が下を向いて泣きそうになると、真咲がそっと片手で引き寄せ、自分の胸元に顔を埋めさせた。

「どうしてそんなに優しくしてくれんだよ?!男なのに・・・」

「んー・・・オレにとっては男も女も関係ないんだ。自分の気持ちに正直に生きたいだけ。・・・だから広斗は一人でグルグル考えんなよ。こんなに瞼はらしてさぁ・・・可愛すぎるだろ!」

そう言って、真咲は広斗の瞼にそっとキスを落とすと、頬にかかるくせ毛を耳にかけてやった。




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