【曼珠沙華】 炎に落ちる 060


 結局、正月の3日間を桂と一緒に過ごして、気が付けばもうすぐ学校の始まる日が迫っていた。

あの後、天野さんには会っていなくて、母親も美容院への配達を頼まないし、天野さんからの呼び出しもないまま。

急に帰ってしまって、気を悪くさせたか・・・。
それに、なんとなくだけど、天野さんが俺に「行くな」って言った気持ちも分かる。

天野さんにとっての俺は、どんな存在だったんだろうか。
大人のあの人と、俺の感じる好きの度合いは、そもそも違っているだろうけど、もし桂が電話をくれなければ、俺は天野さんと・・・。

憧れているあの人に、くっついていたんだろうと思った。

ただ、俺と天野さんの間で「好き」って言葉は交わされていない。

好きになりそうって、そう言われたことはある。でも、それきり言われなかったな・・・・。
可愛い、とかばっかりで・・・。

何処かで、別れが来ることを悟っていたんだろうか。





「千早、そう言えば進路って決めたのか?」

「え?」

「大学だよ。それか、就職するとか・・・?!」

「ああ、・・・進路ね。まだ決めてないけど、勉強は好きじゃないし、デザインの専門学校行こうかな・・・。」

朝から、俺の部屋でくつろぎながらベッドに横たわると、桂は枕もとの雑誌をペラペラとめくっている。
きっと興味ないんだろうな。一点に注目するようなページはないみたいだ。時間つぶしか・・・。


「なあ、桂。」
「・・・ん?」

「キスする?」
「・・・・・ン」


手にした雑誌を床に落とすと、桂が俺の頬をゆっくり撫でに来る。
横向きになって、髪の毛が頬に掛かっているのを剥す様に、そっと摘んでは耳にかけ、それから俺の唇に触れた。

見つめ合う瞳には、お互いの顔が映っていて、その表情は幸せそのもの。

.....チュ......ツ.....、チュツ......

軽く触れるだけのキスを何度も交わし、段々笑みがこぼれそうになると、俺は桂の胸に顔を埋めた。

こういうのも、本当は恥ずかしくて仕方がないんだ。

天野さんとはもっとエロいキスを交わしていたっていうのに、桂が相手だと、素の自分が前面に出てしまう。
それに、やっぱりどこかでは、昔なじみの親友という立場が消えたわけではなかった。
その親友とキスをしている・・・・。

- ヤバイ・・・・・マジで照れるし・・・・。




「千早~ぁ、桂く~ん、ケーキ食べようよぉ。」
そう叫んでいるのは俺のアネキ。

「おい、ケーキだってよ。食う?!」
桂の顔を見あげて聞くと、「うん。」と言ってもう一度俺の鼻にチュッとする。

せっかく二人でまったりしていたのに、アネキに邪魔されて台無しだ。

まあ、此処でまさかのエッチなんかはしないけども・・・・・。
学校が始まれば会える日も減ってしまうし、少しの時間でも、たとえ服の上からでも、互いの体温を感じていたかった。

こういうのを恋する気持ちっていうのかな・・・・・、なんて、な。






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