【曼珠沙華】 炎に落ちる 063



 正月ボケで、勉強とか全くやる気が出ない俺に、いよいよ出番がやって来た。

その晩、店の定休日に合わせてやって来たのは、アネキのカレシ。
名前は『友田 佑二』さんと言って大手の建設会社の社員。
人の良さそうな友田さんは、アネキの好きな俳優に似ていて、やっぱり男も顔か・・・と思った俺だった。

人間は中身だ。なんて言っているけど、先ず気に留めるキッカケは、自分の好きな顔から入るもんな。
そう思うと、アネキも結構なミーハーなのかもしれない。

夕飯に招いた友田さんに、父親が若干の牽制球を投げかける。
「友田くんは将来どうなりたいと思ってる?」

なんて事を言って、鍋の白菜に箸を伸ばすが、自分はふらふらしているくせに人の将来心配している場合じゃないよ・・・と思う俺。
でも、世の父親はこういうものなのかな・・・。

「自分は、発展途上国に行って橋を架けたいと思っているんです。開発されていない国では、子供が学校に通うのに河を歩いて渡るところもあるんですよ。そういう国や地域に橋があればどんなに役立つか・・・。是非、そういう仕事に携わりたくて。」

「・・・・は、ぁ・・・・・。そうですか・・・・・。」

早くも友田さんの情熱に押され気味の親父だった。

「すごいですねぇ、そういう所もあるんだ・・・?!俺だったら休んでるな。」
と、言った俺に「ははは、日本に居たらそう思っちゃうよね!危険な環境に子供を置くなんて考えられないもんな。」と答えた。

「僕たちは、周りから大事にされて生きてきたから、自分が学びたいって想いが薄いっていうか・・・。でも、そういう所で生きている子供たちは、必至で学びたくて辛い道のりでも通うんだよね。ほんと、頭が下がる。」

「・・・・そうですね。・・・・ホントに・・・・。」

- なんだ、この人は顔だけじゃないんだ。
ちゃんと中身に惹かれてたんだな、アネキは。

そう思ってアネキの顔を見れば、ちょっと目が潤んでいた。
まさか、感動してんじゃないだろうな・・・。

この二人は、デートの時にこんな会話をしているんだろうか。
想像すると、ちょっと笑える。アネキがそんな事を話すような女とは思えないっていうか、家にいる時の顔とは違うんだと思った。

「僕は、辞令が出たら未開発の地域にも行くつもりです。その時、塔子(とうこ)さんと一緒に行けたらと思っています。もちろん苦労は掛けるかもしれませんが・・・・・。できれば、・・・・・結婚させてください、お願いします。」

友田さんが箸を置くと、向かいに座る父親に言って頭を下げる。


- きた・・・・・。これが、アレか・・・・。結婚の承諾をもらう男の姿。

俺は少しドキドキした。
アネキの事だけど、まるで自分の事のように緊張する。

「・・・・お父さん・・・・、」
小さい声で父親に呼びかけるアネキは、いつもの男勝りなアネキではなかった。
なんだか可愛いっていうか・・・。

「俺、友田さんのこと尊敬します。うちのアネキにはもったいないよ。」
と言ってやるが、持ち上げる訳ではなくて、本当にそう思ったから・・・。


少しグツグツと煮詰まった鍋に目を移すと、「分かった。・・・その代わり、大学は卒業しなさい。結婚はすぐにしたいならそれでもいいが、塔子も将来のために大学に進んだんだ。途中で投げ出して結婚は許さない。」

父親がそういうと「ありがとうございます。」と、友田さんが頭を下げる。
アネキも黙って同じように頭を下げていた。

俺はというと、そんな二人を眺めてちょっと感動・・・。

なんだか、家族の大事な儀式に立ちあえて、少しだけ大人になった気分だった。

「ちょっと千早、出汁持ってきなさい。あと、卵もね。」

俺の背中に声がかかり、振り向くと母親がいた。
やけに静かだと思ったら・・・・。

俺は、返事もせずに立ち上がり台所へと行く。

すると、母親の声で、
「この子、男みたいなところがあるんだけど、宜しくね。」

「は、い。・・・・分かりました。」
友田さんはたじろぎながらも、受け入れてもらえた事にホッとしたんだろう。顔が緩んでいた。

「お母さん!!男みたいなところって・・・・ひどいわねぇ。」
アネキも母親に言っているが、みんなが笑顔になって一安心の俺だった。

やっぱり、家族に祝福されて結婚するってのは、幸せな事だよな・・・・・。





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