【曼珠沙華】 炎に落ちる066



 「そりゃあ、オレはガキだよ。金もないし千早を車で送るなんて何年先になるか分かんない。」

信号が青に変わっても立ち止まったまま話す桂。


「・・・おい、青。・・・行くぞ。」
そう言って歩き出そうとする俺の手を引っ張ると、「聞いてんのか、オレの話。」という。

「聞いてる。桂がガキだっていうなら、俺だっておんなじ。俺もガキだから、天野さんに子供扱いされたまんまだ。」

「・・・ヤッタクセニ・・・・」



小さな声で吐き捨てるように言ったのが聞こえた。

その通り。桂には報告はしていないけど、確かにヤった。
ていうか、手ほどき?してもらったんだ。
けど、俺は天野さんではなくて桂を選んだ。なのに、そんな言い方をされると腹が立つ。

「うるさいな、いちいちそんな事言う事じゃないだろ。察しろよ!」
少々キツイ言い方で桂に向き合えば、
「はあ?・・・察したくないから聞かなかっただろ、今まで・・・。」
桂も声高になってきて、俺たちは信号機の下で言い合いみたいになってしまう。


「人が見てる。もう帰ろうぜ、コンビニ行くんだろ?!」
俺はウンザリして歩き出そうとするが、まだ話の続きをする桂は立ち止まったまま。

「結局・・・千早はオレに何も言ってくれないじゃん。ホモかもしれないって悩んだ事も、オレに相談せずにあの人に相談して、おまけにヤっちゃってさ。オレの方がずっと前から千早を知ってるってのに・・・。」

「・・・・・桂・・・・・声、デカイから・・・。ヤるとか言うな。」

バカみたいなことを往来で言い合っている俺たち。
通り過ぎる人が二人の顔を見ていくから恥ずかしくなった。

「もう帰る!!今日は勉強やめだな。」
と言って、俺は信号の点滅する横断歩道を走って行った。

くだらない言い合いはしたくないのに・・・。
天野さんの事をバカにされて、頭には来たけど桂には負い目もあるから・・・。
天野さんがいなかったら、俺はずっと一人悩んだままで、桂にだってこんな風に気持ちを伝えることは出来なかった。

通りを挟んだ俺と桂。


俺は背中を丸めると舗道を歩いて行く。
後ろを振り返る気にもなれなくて、じっと下を向いて歩いた。


ふぅ~っと息を吐く。

こういう事で喧嘩したくはなかった。俺の性癖の事が、結局は二人の間に溝をつくるんだと思うと悲しくなる。
一緒に居たい。ただそれだけの事なのに・・・。


桂の家のある交差点に差し掛かる。
と、俺の後ろからバタバタと足音が聞こえてきた。

ふいっと振り返った俺に、桂の腕が絡みつく。


「・・・ってぇ・・・。くび、締めんな。」
そう言って振りほどこうとするが、尚も桂は俺の身体を羽交い絞めみたいにしてきた。

「も、お・・・、子供のプロレスじゃないんだぞ。ふざけんな!!」
俺はキレ気味に言うが、腕を離した桂は、今度は俺の手を握ると自宅の方へと引っ張って行った。






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