【曼珠沙華】 炎に落ちる071


 桂と二人で、大通り沿いのファミレスにきた俺は、早速メニューを食い入るように見始める。

大好物のハンバーグも食べたいが、とんかつも食べたい・・・・。
一人でう~ん、と悩んでいると、「オレがとんかつ注文するから、千早はハンバーグ頼んで分けようよ。」と桂が言った。

「おっ、いいの?!お前そうめん食ったのに・・・。もっと軽い方がいいんじゃないか?」

「大丈夫だよ。もう腹減ったし・・・。」
そう言って店員を呼ぶとハンバーグセットととんかつを注文した。

「デブっても知らないからな。」
俺が小さな声で言うが、桂はふふん、と笑うだけ。

なんだかデートみたいだな。と言いたいところだけど、心に仕舞う。

ぐるりと店内を見回せば、カップルも多くて・・・。
心の中で、俺たちもカップルなんだけどな。と思うと顔がニヤける。


時々桂と目が合えば、ちょっと恥ずかしくなって目を逸らせた。


『お待たせしました』と言って、二人の注文したものが運ばれてくると、俺はハンバーグにナイフを入れ、大きな塊を頬張った。
もう、最高に美味しい。家でのご飯より格段にうまくて、母親には言えないけど毎日こういうのが食べたいと思う俺。

「とんかつも食えよ。・・ホラ」
桂が、俺の皿にとんかつを3切れ乗せてくれた。

「ありがとー。」
そう言って、今度は俺が切り分けたハンバーグを桂の皿に乗せる。

二人で満面の笑みを浮かべながら、料理を口に運んでは幸せな気持ちになった。
今頃は、アネキと友田さんもこうやって顔を合わせて食べているんだろうか・・・。
そう思ったら、【結婚】って事が身近に感じられて、俺は一人でニヤニヤしてしまう。


しっかりご飯を平らげて、ふぅ~っと腹を撫でると、頭の後ろの方から賑やかな人の話し声が・・・。

この時間になると、騒がしい輩が出入りするようになって、繁華街にも近いからあまり長居も出来ない。


「そろそろ帰るか?」
「うん。」


伝票を持つと、後ろを振り返った俺の目に入ったのは、凄く苦手な感じの連中。

ファッションは独特で、シャレてはいるんだけど・・・・・・。
髪の毛を派手な色に染めて、耳や顔のあちこちにピアスをしている男が3人。
賑やかに笑いながらテーブルに着こうとしていた。

俺は、出来るだけ目を合わせない様にしようと思ったが、「あっ!!!お前。」という声が.......。

声の方に目をやると、嫌な記憶がよみがえってくる。
大晦日の晩に、天野さんの店に行く途中で絡んできたヤツだった。

- ヤダな..........

そう思っていると、そいつがテーブルに近寄って来る。

「...........誰?」
俺に聞いた桂が、男の方に目をやった。

「やあやあ、こんな所で会うなんて、な。」
「.......................。」

俺は黙ったまま。

「帰ろう。」と言って桂が立ち上がるが、「ちょっと、まだいいじゃん。せっかく会えたんだしお話したいんだけど?!」と、男は桂の肩を押し戻して座らせる。

「......................、何だよ。話なんかないし。」
ムッとして言えば、尚も近寄ってきて、俺の隣に腰掛けてきた。

- マジかよ..................、勘弁してくれよ。

心の中で言うが、男は俺の顔を覗きこむとニヤッと笑う。
すると、向かいに座った桂が身を乗り出して、慌てた俺は手をかざして止めた。

「なんだか、この間より色っぽくなってんじゃん。・・・あ、もしかしてコイツお前のオトコ?」
そういうと、桂の方を指差してニタニタ笑う。

...........ムカつく...........。

ファッション云々より、コイツの性格にムカついた。
自分より年下なのを分かって絡んできてるんだ。

一緒に来た仲間は、別の席に座ってこちらを見ていたが、特に絡んでくる事はなさそうで、笑っているだけだった。

「なあ、やっぱアレか・・・、オカマだから男とやっちゃうわけ?どっちがどっち?」
俺と桂の方を指差すと、尚もしつこく聞いてくる。

「・・・・・っさい。オカマじゃねえし!」

「いやいや、どう見たって髪の毛伸ばしちゃってさ、ツルツルの肌してるし、綺麗なお顔でさぁ、オカマじゃん!」

「ちょっと、アンタ。こんなとこで何言ってんですか?!オレたち帰るんで。」
いい加減、桂も腹が立ったのか、男の顔を睨みながら言う。

「じゃあ、お前だけ帰れよ。オレはこのオカマに用があるの!」
桂の顔を舐めるように覗き込んで言うと、俺の肩を掴んで顔を近づけてくる。

「おいっ、・・・・・」と言った桂だが、急に俺と男の頭上に視線を移すと黙ってしまった。
俺は、その視線の先が気になって目で追う。

ゆっくり振り向いた俺の目には、天野さんの姿と一緒に、大柄な女の格好をした男が映っている。
分厚い胸板に、シンプルなワンピース姿で、付けまつげはバサバサして重そうだった。

「オカマに用事って、アタシも混ぜてくれるのかしら?!いいわよぉ~~~ん。」

大きな手が、男の顎を掴むと笑いながら言ったが、その目は不気味なほど光っていた。

「はあっ??!!!」
ファミレスに響き渡ったのは、上擦った男の声で...........。






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